パート社員から派遣社員への嫌がらせはパワハラ?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

2018年3月27日、厚労省の有識者検討会が新たにパワハラの3つの判断基準を示したと報道されました。

  1. 優越的な関係に基づいて行われる
  2. 業務の適正な範囲を超えている
  3. 身体的・精神的な苦痛を与える

まずは『優越的な関係』がパワハラの判断基準となりますが、例えばパート社員による派遣社員間での嫌がらせ行為は、この『優越的な関係』に当たるのでしょうか? センチュリー法律事務所の佐藤宏和弁護士に伺いました。

 

■パワハラには法律上の定義や基準はない

派遣社員が派遣先でパート社員から「仕事ができない。」「使えない。」「契約更新はさせない。」などの言葉や、仕事を押し付けられるなどの嫌がらせを受けた場合、これはパワハラに該当しますか?

(佐藤弁護士)「パワハラに法律上の定義や基準はありません。法律上では、民法709条の『不法行為』にあたるかが問題になります。

その場合は嫌がらせ行為が行われた経緯・人間関係・回数・時間・期間・表現・押し付けられた仕事の内容、などにより、不法行為にあたるか否かが判断されます。

パワハラという言葉が出来たのは2003年と言われておりますが、15年経った現在でも法律上の定義はありません。ですから、上記ケースがパワハラに該当するかどうかを判断する法律上の基準は存在しないのです。法律上は、『パワハラに該当するか』ではなく『不法行為に該当するか』が問題になります。」

 

■パート社員と派遣社員、どちらが上?

厚生労働省の『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議』が提案したパワハラの定義には『職場内の優位性を背景に、苦痛を与える行為』とありますが、パート社員と派遣社員という関係ではどちらが優位なのでしょうか?

(佐藤弁護士)「労働契約の種別が職場での権限や優位性を決めることはありません。パートか派遣かというのは、会社と労働者との法的な関係を定めるもので、労働者相互の関係を決めるものではないからです。

労働者相互の関係を決めるのは契約種別ではなく、会社が与えた権限です。ただ、通常はパートや派遣の人が職場内で他の労働者より優位な権限を与えられることはあまり多くないでしょう。」

与えられた権限という点においては、パートも派遣もどちらが優位というわけではないようです。片方に職場内での優位性がないこの二者間では、パワハラが成立する可能性はそれほど高くないと考えられます。もし嫌がらせがあれば、それは不当行為として裁かれることになるようです。

 

■派遣社員がパワハラされたら?

所属は派遣会社ながら、派遣先企業の社員と共に働く派遣社員。もし職場でパワハラを受けたら、その責任は派遣元と派遣先のどちらにあるのでしょう?

(佐藤弁護士)「仮にパワハラ行為が不法行為になる場合、一義的に訴える相手は加害者個人ですが、加害者の雇用主が連帯して使用者責任を負う可能性があります。」

 

■パワハラされたらまず派遣先に相談すべきですか?

A:「法律的に責任を負う者に相談したいなら派遣先ということになります。」

(佐藤弁護士)「しかし、法律的な話は別として、誰に相談すべきかというのは一概に言えないはずです。いきなり派遣先に話すとカドが立つとか、派遣元に先に相談してうまく調整してもらうとか、あるいは逆に派遣先の方が話しやすいとか、法律と関係のないさまざまな配慮があるでしょう。」

パワハラを含む職場での嫌がらせ行為は増加を続けており、2016年度の労働局や労働基準監督署への相談件数は約7万1千件だそうです。

厚労省の有識者検討会では法的にパワハラを禁止することも視野に議論されました。誰もが安心して働ける環境作りへの取り組みが期待されます。

 

*取材協力弁護士:センチュリー法律事務所 佐藤 宏和(東京弁護士会所属。米国公認会計士(未登録)の資格所持。不当解雇や残業代請求などの労働問題を得意とする。業務内容や社内の力関係を理解し、膨大な事実の中から法律上意味のある事実を見つけ出し、事件をスピード解決へと導くことに重きを置いています。)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

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