嫌がらせや復讐のために、性的な関係にあった人の裸や性行為中などの写真を公開するリベンジポルノ。2014年には通称リベンジポルノ被害防止法の『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』が成立したものの、全警察に寄せられる相談件数は毎年増加を続けているそうです。
このリベンジポルノ、被害を未然に防ぐにはまずは撮影させないことが第一。しかし、撮影されてしまった場合はデータを消去させるしかありません。それを相手が聞き入れくれなかったら……? ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に伺いました。
■スマホ破壊はNG、データ消去はOK!
交際相手と別れる際、交際中に撮った性的な写真の消去を求めたがどうしても聞き入れてもらえなかった。そこで、相手からスマホ・デジカメやSDカードなどのデータ記憶装置を奪い取り破壊した。これは罪に問われますか?
(寺林弁護士)「相手が告訴すれば、器物損壊の罪の問われることになります。」
どんな事情があっても、人の持ち物を破壊すれば犯罪となるのですのですね。では機械ではなく、データを消去するだけではどうでしょうか? これも器物損壊罪ですか?
(寺林弁護士)「それは犯罪行為には該当しないと考えられます。」
器物損壊罪は、『他人の物を損壊し、又は傷害』が成立の要件。データはこれに当たらないと考えられます。
『一定の重要な文書又は電磁的記録を物理的に破壊するなどの方法で使用不能にする行為』として文書等毀棄罪に当たるのではないかと思われますが、こちらは対象となるのが『公務所の用に供する』あるいは『権利又は義務に関する』データとされているため、私的な写真は該当しません。なので、データを消去するだけでは犯罪行為とならないのです。
■一番の予防は撮影させないこと
リベンジポルノを防ぐため相手のデータを消去するのはセーフということがわかりましたが、できればそのような強引なやり方はしたくないもの。他にどのような手立てをとればよいでしょうか?
(寺林弁護士)「基本的には、公開に至る前に法的手段をとることは困難だと思います。合意の上で写真を撮っているからです。
ただ、消去を依頼した際に半ば脅されたり、消去の交換条件として苦痛なことを強いられたりしたような場合には、これを理由に慰謝料請求などを行い、圧力をかけるという方法はあり得ると思います。」
当たり前ですが、写真を撮らせてしまったらその写真は撮影者の所有物。撮影者が他に晒すことなく私的に使用する限りは、被写体となった者にはどうすることもできそうにありません。やはりリベンジポルノの一番の予防は、流出した際に困る写真を撮影させないことなのです。
*取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。離婚・男女トラブル、労働トラブル、交通事故、借金問題、遺産相続、詐欺被害、消費者被害、刑事事件などを扱う)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)