働き方改革をはじめとし、2018年は労働に関する法律の改正が行われています。
労働者の働き方を見直す取り組みの1つとして、正社員化や人材育成、賃金改定などを行った企業に対して国が助成金を支払う『キャリアアップ助成金』も注目されています。
キャリアアップ助成金は助成制度のなかでも、受給しやすい助成金です。例えば、正社員化コースの助成金では非正規雇用労働者1人あたり36~72万円。
最大20人まで申請することができます。助成金は専門家がいなくても申請できますが、申請にはガイドラインに沿った計画書の作成や各種申請書類の作成、事業の実施報告など多くの手間がかかります。
この記事では、今注目が高まっているキャリアップ助成金の概要をご紹介していきます。
■『キャリアアップ助成金』には7つのコースがある
キャリアアップ助成金とは、アルバイトや契約社員、派遣社員などの非正規雇用労働者に対して企業がキャリアアップを目的とした取り組みを行う際に厚生労働省から支給される助成金です。
◆正社員化コース
正社員化コースは、有期雇用契約労働者を企業が正規雇用に転換したり、直接雇用したりした場合に助成する制度です。
正社員化コースは2018年より、1事業所につき1年度最大20人まで申請することができます。
雇用転換 | 受けられる助成 |
有期雇用から正規雇用に転換 | 労働者1人につき42万7,500〜72万円 |
有期雇用から無期雇用に転換 | 労働者1人につき21万3,750円〜36万円 |
無期雇用から有期雇用に転換 | 労働者1人につき21万3,750円〜36万円 |
※正規雇用への転換の場合は、転換前後6ヶ月に比べ、5%以上増額していることが条件。
受けられる助成金額は会社規模や生産性などによって変わります。また、対象となる労働者の家庭状態や年齢によっては金額が加算される場合もあります。
◆人材位育成コース
有期雇用労働者に対して、一般職業訓練(Off-JT)や有期実習型訓練(ジョブ・カード活用)などを行った場合は訓練の時間数によって賃金の助成を受けることができます。
※ただし、『キャリアアップ助成金 人材位育成コース』 は2018年(平成29年)4月1日より『人材開発支援助成金』に統合されます。(参考:キャリアアップ助成金が変わります|厚生労働省)
●一般職業訓練(Off-JT)の場合
労働者1人1時間あたり475〜960円の賃金助成と、経費助成金を受けることができます。なお、助成金額は企業規模や生産性などによって変わります。
●有期実習型訓練(ジョブ・カード活用)の場合
労働者1人1時間あたり665〜960円の賃金助成と、経費助成金を受けることができます。こちらも、助成金額は企業規模や生産性などによって変わりますが、1年度1事業所あたり最大1,000万円という支給上限があります。
◆賃金規定等改定コース
有期雇用労働者の基本給の賃金規定を改定して2%以上昇給させた場合に、対象労働者の人数に応じて助成を受けることができます。
この場合、労働者1人あたりの助成金額は対象労働者の人数に応じて増えます。また、『中小企業で3%以上の改定』や『職務評価による賃金の増額改定』などの場合はさらに加算されるケースがあります。
◆健康診断制度コース
有期雇用契約労働者を対象に法定外の健康診断規定し、4人以上(延べ数)実施した場合は1企業最大1回まで28万5,000円〜48万円の助成を受けることができます。
◆賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者と正社員で、職務に応じた共通の賃金規定を作成・適用した場合は1企業あたり最大1回まで42万7,500円〜72万円の助成を受けることができます。
◆諸手当制度共通化コース
有期雇用労働者と正社員で、職務に応じた共通の諸手当制度を新たに設定・適用した場合は1企業あたり最大1回まで28万5,000円〜38万円の助成を受けることができます。
◆選択的適用拡大導入時処遇改善コース
労使合意による社会保険の対象拡大を実施し、被保険者の基本給を増額した場合に助成を受けることができます。助成金額は、企業規模や基本給の総額割合に応じて変わります。
ただし、こちらの助成制度は2020年(平成32年)までの暫定措置となりますので、助成金の利用を考えている場合は早めに申請しましょう。
◆短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者の所定労働時間を延長し、社会保険の適用者にした場合に、女性を受けることができます。助成金額は労働者1人あたり28,500円〜19万円まで、短時間労働者の延長した労働時間に応じて金額が加算されます。
■助成金の申請方法
キャリアアップ助成金は、厚生労働省の『有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン』に沿って計画書を作成し、管轄の労働局やハローワークに提出します。
監修弁護士 小林 洋介(センチュリー法律事務所。一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に応じて、既存の解決策にとらわれず、新しい解決策を常に模索し、提案し続けていきたいと考えております)
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