遺言を残すことは義務ではありません。しかし、相続トラブルを防ぐ・特定の人に相続させるためには、遺言書を作成しておいたほうがよいケースがあります。
残された家族、親族が争う光景は見たくありませんよね?相続トラブルが起きやすいケースを確認しておきましょう。
この記事は、法律事務所アルシエンの武内 優宏先生に監修いただきました。
こんなケースでは遺言を残しておこう
相続に備え、生前に行える対策として最も一般的なのが遺言ですが、夫婦の間に子供がいない場合は、特に遺言を残しておいたほうがよいかもしれません。
夫婦間に子供がいない場合、遺産は配偶者が全額相続すると思うかもしれません。しかし、実際は配偶者と亡くなった方の親か兄弟姉妹で分割することになります。
配偶者と亡くなった方の親が相続する場合、法定相続の割合は配偶者が3分の2、親が3分の1です。
配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続する場合、法定相続の割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
法定相続分での分割でお互いに納得できれば問題ありませんが、不満があればトラブルになってしまうでしょう。もし相続人同士の仲が悪ければ、自分に都合がよいように分割しようとするかもしれません。
相続人同士の仲が悪くなくても、配偶者が亡くなって悲しんでいるなか、血がつながっていない配偶者の親族と遺産分割協議をしなければならないということは、かなりの精神的な負担になります。
また、法定相続分以上の金額を誰かに相続させる場合や、法定相続人ではない方に遺産を相続させたい場合にも遺言は役立ちます。
とはいえ、兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という最低限の遺産を取得できる割合が保障されていますので、この金額を侵害した遺産分割はおすすめしません。
遺言は遺言書で残しましょう
遺言があれば、残された家族・親族間のトラブルを防げる可能性がありますが、家族に遺産分割の方法を伝えておくだけではいけません。遺言どおりに遺産を分割してほしい場合には、法的に有効な遺言書を作っておきましょう。
遺言書には以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
よくある一般的な遺言書のイメージは自筆証書遺言でしょう。しかし、ただ遺言内容を記載するだけでは足りず、形式に則って書く必要があります。
自筆証書遺言を書く際のポイントは以下のとおりです。
- 自筆で書く(パソコンはNG)
- 消すことができない筆記具で書く
- 相続財産や相続人は具体的に書く
- 書いた日を明記する
- 署名、押印をする
せっかく遺言書を残しても、無効となってしまっては意味がないので、書き方には気を付けたいですね。もし、自身で遺言書を書くのが不安であれば、お金はかかりますが公正証書遺言を残すとよいでしょう。
公正証書遺言は、公証役場で遺言内容を公証人に伝え書いてもらうという方法で、遺言書に不備があり無効となることは通常はありません。しかし、作成の際に数万円の費用がかかってしまいます。
秘密証書遺言は、本人以外の方が内容を知らない状態で公証役場に保管します。遺言の存在自体は証明できますが、内容の保証まではされないので注意してください。
残された家族が遺産相続でもめないようにするためには、遺言を残しておきたいですね。しかし、遺言は誰かに口頭で伝えておくといった形ではなく、遺言書を作成して残さないといけないので気を付けましょう。
*記事監修弁護士:法律事務所アルシエン 武内 優宏先生(H19年弁護士登録(東京弁護士会)。法律事務所アルシエン共同代表パートナー、終活カウンセラー協会監修。遺言・相続、中でも「おひとりさま」の法律問題に力を入れている。中小企業の法律問題も多く取扱っており、東京都中小企業振興公社において、法務セミナー講師を勤めている。)
*取材・文:アシロ編集部
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