専業主婦の残業代は340万!?もし専業主婦が夫に未払い残業代を請求したら

 

「専業主婦だって立派な仕事のひとつだ!」という声をちらほら聞きます。

結婚し家庭に入った女性は、家事、家計の管理に、子育て・育児…大変な日々を送っていますよね。

もし、『家庭』が旦那を社長とした『会社』で、専業主婦が『従業員』だったら…。

2016年に新垣結衣さんと星野源さんが出演した『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマが流行しましたね。そのドラマの中の2人は『雇用主』と『従業員』という形で夫婦になろうとしていました。主婦といえど仕事人だ、というも1つの考えですよね。

『定時』なんてものが存在しない専業主婦は毎日が残業の嵐。「規定時間外の残業代はどうなっているんだ!」と未払い残業代を請求したらどうなるのか!?というのを筆者独自の見解で計算してみました。

もちろん、法的にそんなものが認められているわけではありませんし、実際に請求しても払ってくれる旦那さんは極めてまれでしょう。あくまでお茶会の話題の1つにでも、という気軽な気持ちで読んでくださいね。残業についても少し掘り下げて紹介しますので旦那さんの残業事情も把握するのにも役立つかもしれません。

この記事は、パロス法律事務所の櫻町直樹先生に監修いただきました。

 

 

■専業主婦の収入を計算してみよう!

今回は世帯年収700万の世帯のおおよその生活費を計算してみました。

 

★収入モデル

夫:年収700万 妻:専業主婦 子供1人(高校生)

夫の手取り 月37.5万円 ボーナス約100万円(年2回)

金額 備考 妻に割り当てられる分
月収(手取) 375,000 年2回のボーナスが計約100万円
家賃 95,000 郊外マンション 47,500
食費 50,000 家での食事が多い 17,000
外食費 30,000 月に数回程度 10,000
水道光熱費 21,000 7,000
通信費 20,000 子供の携帯代も含む 6,600
日用品 5,000 1,700
衣料品 10,000 3,300
家具・家電 20,000 たまに購入する程度 6,800
医療費 10,000 3,300
夫お小遣い 30,000 0
妻お小遣い 20,000 20,000
交通費 10,000 3,300
貯金 24,000 ボーナス別途貯金 8000
 合計 375,000 124,000

 

参考) 年収700万円サラリーマンの手取り額と生活レベル【年収700万円の割合】

 

 

専業主婦の仕事の価値を数値化するのには、『賃金センサス』や、家事代行サービスの金額を参考にするなどさまざまな方法があります。

この記事ではあえて、妻(従業員)が夫(会社)に給料(生活費)をもらっていると仮定しました。

上の表の一番右、『妻に割り当てられる分』というのは、夫の収入から捻出された生活費を家族3人で均等に割り、それを妻の分としたもの。(百の位以下省略)

(家賃は子供を省き計算、お小遣いは妻の分だけ含む。)

その合計を『専業主婦としての手取り額』として計算を。

 

12万4,500円、これはあくまで『手取り』です。これに加え、住民税や社会保険も夫に支払ってもらっているとして合算して出します。

 

(夫は、妻・子供などの扶養者がいることで社会保険料、住民税は下がりますが、ここでは単純にそれらの額を3人(本人・妻・子供)で割った額を妻が支払ってもらっているものとします。)

 

年収700万、妻、子供(高校生)の社会保険料・住民税は年間

 

  • 社会保険料99万6,000円
  • 住民税31万4,000円

 

となっているので、

 

(99万6,000円+31万4,000円)÷3(夫・妻・子供の3人)÷12ヶ月=約3万6,000円

 

妻は社会保険と月におおよそ3万6,000円を夫に支払ってもらっていることになります。

 

つまり妻が専業主婦としてもらっている額面での月収は

 

  • 12万4,500円+3万6,000円=16万500円

 

となります。

 

■本題! 専業主婦の残業代は!?

前項では、妻の月収は14万1,400円という計算結果が出ました。

 

残業代の計算をする前に、前提とする条件を把握しておきましょう。

 

今回は

  • 規定就業時間(定時)は9:00〜18:00 休憩1時間(週40時間の法定時間)
  • 規定就業日は月曜日〜金曜日の平日
  • 妻は朝の6:00〜22:00(うち休憩2時間)で就業
  • 土日祝日は残業として8:00〜21:00(うち休憩2時間)で

 

とします。

 

残業代といっても、残業した時間や日によってそれぞれ割増がされます。

 

それらの代を割り出すにあたって基準となるのが基本時給。

 

基本時給は『月給の額÷1年間における1ヶ月の平均所定労働時間』で計算します。

完全週休2日制の2018年の休日日数を124日(※)として1ヶ月の平均所定労働時間を計算すると、

(※)参考) http://jpnculture.net/nenkankyuujitu/

 

  • (365日-124日)(1年の労働日数)×8時間(就業時間)÷12ヶ月=約160時間

 

となります。

つまりここでの妻の基本時給は

 

  • 16万500円(妻の月収)÷160時間(1ヶ月の平均所定労働時間)=約999円

 

 

おおよそ時給1,000円といったところですね。キリがいいので1,000円で計算しましょう!

 

残業代は割増賃金となり、

 

  • 就業時間が1日8時間、週40時間の場合、定時〜22:00の残業は基本給の1.25倍《時間外労働割増
  • 22:00〜5:00の残業は時間外労働割増にさらに25の割増、つまり基本給の1.5倍《時間外労働割増1.25+深夜労働割増0.25
  • 法定休日(日曜・祝日)の残業は35倍《休日労働割増
  • 法定外休日(土曜日)の残業は会社の規定による(今回は8時間までは基本給のまま、以降は1.25倍とする)

 

と法律で決められています。

 

では、早速残業代の計算!

 

妻は平日6:00うち休憩を2時間取り、実質14時間就業しています。つまり、実質残業時間は1日6時間。深夜残業はないので、平日の1日の残業代は

 

  • 1,000円(基本時給)×1.25(法定外労働の割増)×6時間(残業時間)=7,500円(①)

土日は8:00〜21:00のうち2時間休憩を取っているので、残業時間は11時間。

 

土曜日は

  • 1,000円(基本時給)×8時間(就業時間)+1,000(基本時給)×1.25(法定外労働の割増)×3時間(残業時間)=11,750円(②)

 

日曜日は

  • 1,000円(基本時給)×1.35(法定外休日労働の割増)×11時間(残業時間)=14,850円(③)

 

つまり、1ヶ月の妻の残業代は

  • 7,500円×20日(平日)+(②)11,750円×5日(月の土曜日)+(③)14,850円×5日(月の日曜日)=28万3,000円

 

なんと基本給を大幅に上回る額に!

年間では(単純計算となりますが)

28万3,000円×12ヶ月=339万6,000円

残業代だけでものすごい額ですね…。

ちなみに残業時間は月に230時間。労働基準法違反です。これが本当の会社なら完全なるブラック企業です。

 

■まとめ

専業主婦の未払い残業代…驚きの額が出ましたね。実際に請求はできませんが、専業主婦にはこれだけの価値があるんだ!とお友達とのおしゃべりのネタにはなるはずです。

年間にして約340万円分の残業、これをこなせるのはきっと家族への愛があるからこそなのでしょう。

 

*弁護士監修/パロス法律事務所 櫻町直樹先生(私が弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall)が語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)

 

*取材・執筆/鈴木萌

 

* 画像

tomos/PIXTA

画像はイメージです

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