不倫問題でよく聞く「一線を越えていない」裁判所はどう判断する?

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昨今、国会議員や芸能人の不倫問題がメディアを賑わせていますが、その際、当事者からは、ホテルでは仕事の打合せをしていただけで「一線を越えていない」という言い訳がされることが多いと思います。

「一線を越えていない」とは性行為はしていないという意味だと思いますが、それでは、そのような言い分は、配偶者からの慰謝料請求の裁判や、配偶者との離婚裁判において、抗弁として通用するのでしょうか?

 

■不貞行為がなければ慰謝料請求の対象にはならず離婚もできない

まず、基本をおさらいしますが、もし本当に一線を越えていなければ、つまり不貞行為(≒性行為)がなければ、基本的には慰謝料請求の対象にはなりません。

また、離婚が出来るかどうかですが、法律が離婚を認める場合は5つあり(民法770条1項)、その中に相手方の不貞行為がありますが、不貞行為がなければこの理由を根拠に離婚をすることはできません。

 

■「一線を越えていない」発言、裁判所はどう判断?

それでは本題の「一線を越えていない」との当事者の言い分を裁判所がどう判断するかについてです。

この点、不貞行為があったかどうかについて争いがある場合には、慰謝料の支払いや離婚を求める当事者としては、不貞行為の存在を立証する必要がありますが、不貞行為を立証するための証拠としては、不貞行為を撮影した写真やビデオ、二人でホテルに入っていくところを撮影した写真、メールやSNSでの会話の内容等があります。

そのため、当事者がいくら「一線を越えていない」などと言い訳したとしても、二人で新幹線の座席で手をつないでいる場面の写真や、同じホテルの部屋や相手の自宅で朝まで過ごしていたといった事情や証拠があれば、不貞行為ありと認定される可能性が高いでしょう。

一方で、慰謝料や離婚を請求されている当事者としては、不貞行為ありとの認定を覆すためには、ホテルの部屋や相手の自宅で仕事の打合せをしていたという客観的な事情を主張するとともに、信用力の高い証拠(打合せメモ、第三者の証言等)を提出して争うことが考えられます。

ただし、仕事の打合せは必ずしも夜にホテルや相手の自宅でする必要はないので、仕事の打合せをしていたとの言い分を裁判所に認めてもらえる可能性は高くはないでしょう。

 

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

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理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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