今年に入ってから多数ご相談いただいている詐欺の一つに、愛人契約を誘い文句とする詐欺があります。
残念ながら多くのご相談者様が泣き寝入りせざるを得ない状況にあり、弁護士としては非常に悔しいところです。
現在でも同様の詐欺被害に遭われている方がいらっしゃるため、これ以上の被害拡大を止めるべく、今回は愛人契約詐欺について、その手口を解説したいと思います。
■愛人契約詐欺の流れ
被害者の方々は、ある出会い系サイトで犯人と接点を持ちます。このサイトは、成功した男性とそういった男性との出会いを求める女性をマッチングするという特徴を有しています。
犯人から毎月の手当の支払などを条件とする愛人契約を締結することを提案され、まずはお互いの要望などをすり合わせるという目的で会うことになります。
会う場所は高級ホテルのラウンジや個室を指定されます。
犯人は「成功者」を装っているため、高価そうな時計を身に着けているなど、良い身なりをしていることが多いようです。なお、「成功者」を装った犯人が来るというパターンのほかに、「成功者」を紹介するという人物が現れるというパターンもあるようです。
犯人からは、月々の手当を数十万支払うのと同時に、被害者のクレジットカードの決済口座を犯人の口座とする旨の提案があります。
つまり、被害者が自分のクレジットカードをいくら使っても、犯人の口座から引き落とされるので心配はない、自由に使ってよいという提案です。
そしてこの決済口座の変更にあたり、自分は銀行の頭取などに直接話を通すことができる立場にあるので、クレジットカードを自分に預けてくれればこの手続をやっておくと申し向け、被害者からクレジットカードを受け取るのです(クレジットカードは後日返却するという話をされます)。
この際、手続に必要であると話して、被害者から暗証番号も聞き出します。
クレジットカードを受け取った犯人は、その足でコンビニのATMなどに向かいキャッシングで限度額までお金を引き出します。被害者の方は、覚えのない高額な請求が来て、初めて被害にあったことを知るというのが、愛人契約詐欺の流れです。
■犯人を特定できる可能性は限りなく少ない
犯人は信用をさせるために、免許証など見せることもあるようです。ですが、当職がお受けしたケースでは偽造の免許証であり、身元の特定には使えませんでした。
また、携帯電話の契約者情報を調査しても、レンタル携帯であり、本人に繋がる情報が得られませんでした。すなわち、後で犯人の身元を特定しようとしても全く手がかりが存在しないわけです。
当職がお受けしたケースのうち、たったの一件のみ、警察と当職及び当職が経営する調査会社の連携により起訴までこぎつけた事案がありますが、これは本当に運が良かったと言わざるを得ません。
上記以外にご相談を受けたケースでは、そのほとんどが犯人の身元すら特定できず泣き寝入りしています。
知能犯担当の刑事に聞いたところでは、詐欺のシナリオが詐欺師の間で共有されているせいか、同様の被害相談がかなりあるようです。
もっとも近いところでは数日前(平成29年8月末)に上記の被害に遭われた方からの相談をお受けしました。現在でも同様の詐欺が行われております。
上記のような話を受けたら、クレジットカードを渡したり、暗証番号を教えたりすることは避けていただきたく思います。
*著者 弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)
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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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