8月14日、東京都大田区や神奈川県川崎市で車上荒らしを行っていたとして、無職の男(52)が逮捕されました。男は防犯装着がついていない自動車を狙い、バールなどで窓ガラスを割るなどして犯行に及んでいたそうです。
取り調べで余罪を追及された男は、容疑を認めた上で、「70件くらいやった」と供述。そして、動機については「生活が苦しかったから」などと述べている模様です。
このように、同じ犯罪を同じ手口で何度も行う犯罪者は少なくないのが現状。当然、罪は重くなるものと思われるのですが、実際のところどうなのでしょうか。
星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士に真相をお伺いしました。
■同じ犯罪でも回数を重ねることで罪が重くなる?
「同種犯罪、異種犯罪にかかわらず、確定判決を経ていない犯罪は基本的にまとめて併合罪(刑法45条)となります。
併合罪では、原則として最も重い罪の刑の長期の1.5倍が全体の法定刑の上限となります(刑法47条)。ただし、各罪の長期の刑期の合計年数を超えることはできません(刑法47条但し書き)。
したがって、窃盗1件だけの場合と比べ、窃盗の法定刑上限(10年以下)が1.5倍(15年以下)となります」(星野弁護士)
■「70件」は珍しくない
「実務上、車上荒らし、ポスト合鍵を使用した住居侵入窃盗、盗撮行為、詐欺事案など、警察による発覚・検挙が難しい事案では、今回の事件のような余罪が70件以上という犯人は、それほど珍しくもありません。
窃盗などは、発覚して逮捕されるまで何回も繰り返されることが特に多いので、今回の事件はたまたま報道されていますが、実際の裁判では70件とかそれ以上の余罪がある事件は、実はかなりあります。
また、余罪が70件あっても、実際に起訴までされるのは被害内容が特定できた分だけとなり、さらに被害内容が特定できても、全部を起訴するわけではなく、実際には3~5件程度起訴されるだけとなることが多いです。
残りは、情状面で考慮されることになります。また、実際に起訴されるのは余罪全体のうちの数件となりますし、併合罪の法定刑上限まで重い刑罰が実際に下されることもまずありません」(星野弁護士)
■多少重くなる程度
「実際に下される判決の処断刑は1件だけの場合と比較し、感覚的には「多少重くなる程度」というイメージです。意外かもしれませんが、70件程度の余罪という事件は、実際にはよくあります。
併合罪による法定刑上限の加重はありますが、実際にはそれだけで大幅に刑が重くなるということはあまりありません」(星野弁護士)
1件だけと比較すると重くなることは間違いないようですが、それでも「多少」という範囲なのですね。
*取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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