離婚についての情報は、今やネット上に、いやというほど載っています。しかも、その中には、3年の別居で自動的に離婚できる、と思わせるような誤った情報や、不正確な情報が入り混じっています。
しかし、離婚において必要な情報は、実は8つのポイントしかありません。後悔しない離婚のためには、この8つのポイントをしっかりと押さえ、心と頭を整理し、戦略・戦術を練ることが重要です。
本日は、第1のポイント「二人のパワーバランスを冷静に判断すべし」というお話です。
■その1 二人のパワーバランスを冷静に判断する
離婚相談の中で代表的なご相談は、「いきなり夫から離婚を切り出された。明日からどうやって生きていったらいいのでしょうか? 子どももまだ小さいのに」といって泣き崩れる専業主婦というパターンです。
こんなとき、私は、「あなたとご主人と、どちらが法的に立場が強いと思いますか?」と質問します。
このとき、多くの女性が、「(なぜ当たり前のことを聞くんだろう? 夫に決まっているのに。でもわざわざ質問するということは、答えは違うのかしら? と思いながら、おずおずと)夫だと思うんですけど?」と答えるのです。
そのたびに、私は「ブーッ! 外れです。立場が強いのはあなたなのです!」と答えます。
なぜでしょうか?
民法には、離婚の方法として、「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」という方法が規定されています(「審判離婚」も規定されていますが現実にはほとんどありません)。
そのうち「協議離婚」「調停離婚」は話し合いによる離婚ですから、要するに「当事者の同意」か「法律上の離婚原因」のいずれかが備われば離婚できる、ということになります。
ところで、「法律上の離婚原因」として民法770条1項には、以下のような5つの要件が規定されています。
(1)配偶者の不貞
(2)配偶者による悪意の遺棄
(3)配偶者が三年以上の生死不明のとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続することが困難な場合
の5つです。
(5)は少し分かり難いのですが、要するに(1)から(4)と同程度重要な事情があるとき、という意味です。
しかし、ちょっと考えてみて下さい。三年以上の生死不明や強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合と同程度の重要な事情など、一般にはほとんど想定できないですね。
つまり、離婚の事例で法律上の離婚原因をはじめから備えている夫婦は、ほとんど無いといっても過言ではないのです。
となると、離婚を切り出した夫が離婚するために必要なことは、多くの事例で「妻の同意」ということになります。夫が離婚を切り出した途端、離婚できるかどうかのキャスティングボードは、妻に傾いているといえるでしょう。
このような二人の法律上のパワーバランスを冷静に判断すれば、妻はこのような自分の立場を逆手にとって「離婚はしたくない。でも、私が求める条件に全てOKと言ってくれれば離婚してあげてもいいわよ」と言える立場ということになるのです。
一般的には弱者と思えるような妻たちへの私の最初のアドバイスは、「夫から離婚を切り出されたら、まずNOと回答すること」です。
二人のパワーバランスを考えたら、当然のことですね。私の説明に納得した妻たちが、笑顔になって事務所を後にする、私どもの事務所では、こんな光景が毎日繰り広げられています。
2つ目以降はポイントについては随時執筆していきますが、ご相談したい事がありましたら、お気軽にご連絡ください。
*著者:弁護士 中里 妃沙子(丸の内ソレイユ法律事務所の代表。離婚を含む家事事件において、質・量ともに日本トップクラスの事務所を率いる女性弁護士。「一人で思い悩む必要はありません。お気軽にご相談下さい」)
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*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
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