6月8日の午前9時15分頃に、阪神高速道路池田線の上り線でトラック同士の事故があり、破損した荷台から豚が逃げ出すという出来事がありました。
豚は無事に捕獲されましたが、逃げ出した影響で、高速道路は約5時間半にわたり通行止めになりました。
豚が高速道路内に逃げ出し通行止めになることは珍しい出来事ですが、このことは何かの罪に問われるのでしょうか? 解説していきたいと思います。
■直接の罰則はない
事故が原因となり、結果的に通行止め状態を発生させてしまったことを直接罰する規定はありません。
事故については、注意義務違反があれば、それに対して自動車運転過失致傷などの罪には問われます。
また、積載重量や積載方法の違反があれば、それも道交法違反となりますが、単に事故が原因で結果的に通行止め状態となり、かつ、それが過失であれば罰則はありません。
■道路往来妨害罪
道路を損壊または閉塞して道路の往来を妨害した場合、刑法124条の往来妨害罪が成立する可能性があります。
道路を閉塞とは、障害物による道路を塞ぐことを意味しますので、通行止めとすることも、道路を閉塞させる行為に該当はします。
しかし、道路の往来妨害罪は、過失犯処罰規定がなく、過失の交通事故によって、通行止めとなっても、刑法上の道路往来妨害罪とはなりません。
この点、過失によって、電車の往来に危険を生じさせた場合は、刑法129条の過失往来危険罪という規定がありますが、道路については過失による往来妨害処罰規定はありません。
■民事の賠償はある
以上は刑事罰の話ですが、刑罰法規に該当しなくても、民事上の賠償責任は残ります。
したがって、事故による当事者間の損害賠償の他、有料道路であれば、運営元会社に対し、通行止めとなったことによる賠償責任はあります。
もっとも、過失による事故にすぎない場合は、通行止めとなったことの賠償責任まで追及されるケースはあまりないと思います。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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