退職時にトラブルになりやすいものとして有給休暇の消化が挙げられます。従業員としては残りの有給を全て消化して辞めたいと考えるでしょうが、会社としては引き継ぎを行ってから退職してほしいと考えるはずです。
そこで、必要な引き継ぎを行わずに退職した場合、会社から何かペナルティが科されることはあるのでしょうか?
Q.引き継ぎせずに有給休暇を取るのはNG?
A.会社は引き継ぎを強制することはできません。また、引き継ぎをしなかった従業員にペナルティを科すことも難しいでしょう。
多くの会社の就業規則には「退職は○ヶ月前までに申し出て、会社の承認を受けること」と定められていることが多いですが、この定めに法的な拘束力はないため、従業員は民法の規定に従い最短2週間前に申し出をすれば退職することができます。
また、有給休暇の利用については、会社は「時季変更権」しか有していないため、退職日までに残った有給休暇の消化を拒むことはできません。
よって、マナーには反する行為なのでお勧めすることはできませんが、有給休暇が14日分余っていて、2週間前(14日)に退職を申し出た場合、会社はこれを拒むことはできないため有給を全て消化して退職することができます。
この行為を行ったからといって会社は従業員の退職金を支給しなかったり、懲戒解雇にしたりするようなことはできませんが、引き継ぎのために退職日を後ろ倒ししてもらうように交渉することは可能です。
応じる法的義務はありませんが、最低限の引き継ぎも行わずに退職するのは違法ではないにしろマナーには反しますので、不要なトラブルを避けるためにも多少は会社の引き継ぎに協力して退職するのがベターだといえるでしょう。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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