4月から転勤、もしくは新卒として、新しい会社に入社された方も多いと思いますが、新しい会社は色々と勝手が違ってまだまだ慣れないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな中、新しく入社した会社では「うちは年俸制だから残業代は出ないよ」なんて言われ、戸惑っているケースも時折耳にします。
今回は「年俸制だと本当に残業代は出ないのか」、年俸制の概要と併せて解説していきたいと思います。
■年棒制のメリット・デメリット
まず、年俸制とは、「1年」を単位として労働者の報酬総額を決定する賃金制度のことです。
年俸制は、雇用主が労働者の成果・実績を評価して、今後1年の報酬総額を決定する賃金制度ということになります。
年俸制は、今後1年間の報酬総額が決まるわけですから、雇用主にとっては年間支出・労働者にとっては年間収入が決まり、長期的な計画を立てやすいといったメリットがあります。
また、年俸制であれば、労働者が1年間頑張って成果を出せば翌年度年俸の飛躍的なアップも見込めるわけですから、労働者のモチベーションを上げやすいといったメリットもあります。
他方で、年俸制には、既に決まった一定期間の年俸について、その間会社がどんなに儲かっても労働者がいくら活躍しても給与が増えない(労働者側)、その間会社または労働者がどんなに不調でも決まっている給与を支払わなければならない(会社側)といったデメリットがあります。
年俸制といっても、1年の最初に全額もらえるわけではありません。労働基準法が毎月1回以上支払わないといけないと定めていますので、分割してもらうことになります。
■年俸制の会社だと残業代は出さなくても良いのか?
結論から言いますと、年俸制の会社でも残業代は出さないといけません。
労働基準法は、労働者の健康・プライベートを維持・確保するため、労働時間について規制をもうけ、法律で決められた労働時間を超える労働をさせる場合には割増賃金を支払わないといけないとしています。
年俸制の場合でも労働基準法のルールに従う必要があり、法律で決められた労働時間を超える労働をさせる場合、割増賃金を支払う必要があります。
年俸額に○○時間の時間外手当○○円を含むとすること(みなし残業代制)も可能ですが、実際の時間外労働から計算される時間外手当が定額の時間外手当を上回る場合、その差額を支給する必要があります。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
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