文部科学省の調査では、今年3月大学卒業予定者の就職内定率は85.0%(平成28年12月現在)と、前年同期比で4.6ポイント増加しています。卒業段階でもさらに伸び、前年より高い内定率をマークしそうです。
とは言っても、就職活動が簡単というわけではありません。内定を求めて活動を続ける学生もまだいるのです。そんな切羽詰まった学生たちを困らせているのが、「サイレントお祈り」です。
「今後のご活躍をお祈りいたします」などとよく記載されることから「お祈りメール」と呼ばれるようになった不採用通知。サイレントお祈りはその不採用通知が送られてこないままの状態を指します。大企業の4割が書類選考の不合格を通知していないとも言われています。
このサイレントお祈りについて、弁護士法人エースの竹内省吾弁護士に見解をお聞きしました。
■違法とまではいえないサイレントお祈り
採用か不採用かはっきりしないサイレントお祈りは、他社への応募などさらに就職活動を継続すべきかどうか応募者を悩ませる元となります。これは法的には問題ないのでしょうか?
「マナーという点では通知をするべきでしょうが、通常は、『合格の場合はいついつまでに連絡します』と伝えていると思いますので、合否連絡がなかったとしても法的な問題にはならないでしょう」(竹内弁護士)
では、口頭などで「1週間後に合否を連絡します」と言われたのに連絡がなかった場合は、契約違反や違法などといえるのでしょうか?
「合否通知方法の合意がされたのにそれが履行されないという意味では、ルール違反といえますが、違法とまではいえないでしょう」(竹内弁護士)
待つ身からすればどんな結果であれ明確に伝えてもらいたいものですが、不採用通知を送らなくても法的には問題はないのです。
■サイレントお祈りに損害賠償請求はできる?
それでは、「サイレントお祈り」によって応募者に不利益が生じた場合はどうでしょうか? 合否がわからず中途半端な状態が続くことで他社への就職のチャンスを失ったり、精神的苦痛を受けたりしたことに対して、「サイレントお祈り」をした企業に対して損害賠償などを請求することはできませんか?
「通常のケースではできないと考えられます。合否通知がなくとも他社への応募はできますし、こちらから合否確認することも不可能ではないので、損害賠償請求は難しいでしょう」(竹内弁護士)
そもそもが違法行為とはいえない「サイレントお祈り」 に対し、法的には打つ手なしのようです。せめて、いつどのような形で通知があるのか応募時などに確認しておくしかなさそうです。
*取材協力弁護士:竹内 省吾(弁護士法人エース。企業法務・交通事故・不倫問題・残業代請求をはじめ、多岐分野に対応。弁護士とパラリーガルの緊密な連携により最短ルートで最善の解決へ。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
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