Googleストリートビューに映ったハトが、未確認飛行物体ではないかと話題になったものがあったようです。
Googleストリートビューについては、プライバシー侵害になるのではないかという議論がされることがあり、実際にそれで裁判になったこともあります。実際、Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものといえるのでしょうか。解説していきたいと思います。
■プライバシー侵害の要件
プライバシー侵害が成立するためには、一般的に以下の要件を満たす必要があるとされています。
1. 私生活上の事実または事実らしく受け取られる事柄であること
2. 一般人の感受性を基準にして、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないと認められるものであること
3. 一般の人々に、未だ知られていないことがらであること(非公知性)
これは「宴のあと」事件(東京地判昭和39・9・28)が示した基準です。
もっとも、必ずしもこの要件が厳格に適用されてプライバシー侵害が認定されているわけではないのが実際です。
■“プライバシーとして保護するか”が争点だと上記3要件が重視される
ただし、“そもそもプライバシーとして保護するべきか”という点が争われる場合、この要件の充足の有無がかなり問題になってくることがあります。
私見ですが、「宴のあと」事件判決は単なる地裁判決であり、私生活上の事実等に対象を限定すること、また、非公知性を要求する点で、現在では不適切な要件になっているのではないかと考えています。
特に、非公知性については、昭和39年当時は、情報の発信者はもっぱらマスコミであり、個人が社会に物事を公表することは著しく困難で、「一般の人々に未だ知られていない」という状況が容易に観念することができました。
しかし、現在はインターネットを通じて誰でも気軽に情報発信ができるようになっており、インターネットに投稿されれば、その情報は誰でも閲覧できる以上、「一般の人々に未だ知られていない」ということを観念することができない状況と思います。
その結果、「宴のあと」事件の要件を用いれば、インターネット上に掲載された事項については、プライバシーとして保護されない、ということになってしまいます。
これは明らかに不当でしょう。つまり、プライバシー侵害成立の要件は、現代の状況とは全く合致しないものになっているのです。
■Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものか
では、Googleストリートビューはプライバシーを侵害するものでしょうか。
Googleストリートビューは、プライバシーに一定の配慮をして、顔、表札、車のナンバープレートなどにモザイクをかけています。
また、ストリートビューでは公道からの撮影がされているのが通常であり、公道において撮影する際、周囲の様々なものが写ってしまうことはしばしばあることです。
そのため、一般的にはプライバシー侵害とは言えないと思われます。裁判でも、同じような判断で、プライバシー侵害が否定されています。
もっとも、塀の中が撮影されていたり、モザイクがかかっていない人の顔が掲載されているといったケースもあるようであり、個々の状況によってプライバシー侵害と評価できる場合もあるだろうと思われます。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
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*Lolostock / Shutterstock
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