もし、盗まれた自転車を1年後に発見したら、あなたはどうしますか?
鍵がかかっていなかった場合はそのまま持ち帰ってしまうかもしれません。しかし、それは誤りです。
このような場合には、まず、110番通報して、警察に来てもらうことです。なぜなら、盗まれた自転車が投棄され、遺失物取扱所が遺失物として管理し、一定期間所有者が現れないと、売りに出されることもあります。その自転車を買った人は、正規の所有者になります。元の所有者の所有権は消滅します。
つまり、その正規の所有者が管理しているのに、窃盗犯が管理していると勘違いし、警察にも連絡せずに持ち帰ると、元の所有者は窃盗罪に問われます。
それでは想定できる次の3つのケースでは、どのような対応を取るべきでしょうか?
①誰も管理していなかった場合
もし、その自転車を誰も管理していないか、あるいは、窃盗犯が管理していたような場合は、警察官立ち会いの下、持ち帰りが許されます。もしかしたら、証拠品としてしばらく警察が保管するかも知れませんが、保管後、所有者に返還されます。
②窃盗犯が管理していた場合
窃盗犯が管理している場合でも、警察に通報せず、勝手に持ち帰ると窃盗罪になります。
③盗まれてすぐに発見した場合
それでは、盗まれて30分後に自転車を発見した場合はどうでしょうか。
そのような場合でも、警察に通報せず、勝手に持ち帰ると窃盗罪になります。
■不当な理由でも所有者ではなくなってしまう
自転車が盗まれると言うことは、所有者の管理(法律用語だと占有と言います)を離れ、窃盗犯が管理(占有)することになります。一旦、他人が管理しているものを管理者に無断で持ち帰ると窃盗罪になります。
管理者が正当な管理者であろうが、違法な管理者であろうが、窃盗罪が成立します。それは、他人が管理しているものをいくら所有者とは言え、勝手に持ち帰っては、社会秩序が維持できないからです。
盗まれたものを取り返すのだから、正当防衛にならないのかと疑問を持つ方もいると思います。国によっては、盗まれた直後であれば正当防衛が成立することもあるようですが、日本では、正当防衛になりません。
その理由は、仮に正当な権利者であっても自分の権利を実現するときに法律の手続を踏まなければならないからです。法律の手続を踏まずに権利を回復することを自力救済と言いますが、日本では、ほとんどの自力救済が違法だと判断されます。
権利を回復するには、警察とか裁判所とか正規の機関を利用してしなければならないと日本では考えられています。アメリカの開拓時代とかあるいは内戦状態にあるような地域では、正規の機関を利用など出来ませんから、広く自力救済も許されるようですが、日本では違うのが現実です。
もし、盗まれた自転車を発見したら面倒でも警察に連絡をするようにしましょう。
*この記事は2014年10月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
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*mokuren / PIXTA(ピクスタ)
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