■タクシー車内の撮影と無断公開
タクシー車内でのドライブレコーダーによる撮影行為が違法か適法かは、法律上明確な基準があるわけではありません。
違法となるかどうかは、一般には、被写体の肖像権・プライバシー権の尊重と撮影者の撮影の必要性の利益衡量で決まることになります。
被撮影者による撮影の許諾の有無や目的外利用の有無も判断基準となります。
タクシー車内における客の容貌撮影についてみた場合、まず、防犯の必要性から、乗車時にお客の黙示の撮影の同意があったものと評価することは可能です。撮影することをタクシー側が特に隠していたような場合を除き、他のタクシーも選択できた以上、黙示の撮影の同意があったと考えることは可能です。
しかし、黙示の同意は、あくまで防犯に必要な範囲に限られ、むやみやたらに撮影した映像を公開することまでの同意は、擬制することは困難だと思います。
また、防犯目的に限定して同意した撮影の目的外使用ともいえます。
報道機関が事件を報じる際に撮影した被疑者の映像を放映するのと異なり、公益目的も公共の利益に適う映像公開の必要性も乏しく、本人の同意のないドライブレコーダー映像の公開は、プライバシー権侵害と判断される可能性が高いでしょう。
■賠償責任を負う場合もある
今回は、映像を公開したタクシー側がすぐに謝罪したようですので、プライバシー権侵害で訴えられることはないと思いますが、ホテルや飲食店の従業員が顧客の情報をインターネット上に公開したケースでは、賠償責任が認められることもありますので、安易なプライバシー権侵害には注意が必要です。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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