ベンチャー支援を続ける弁護士が「労務・法務のリスクマネジメント」を重視する理由とは

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奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人である北弁護士に、どのような考えでベンチャー企業や士業開業の支援を行うようなったのかを伺いました。その背景には、弁護士になって間もない頃に、がむしゃらに事件を担当していた経験が根付いているそうです。

北 周士(きた かねひと)弁護士
東京都千代田区、最高裁に隣接する平河町にオフィスを構える。離婚・相続といった問題はもちろんのこと、ベンチャー企業の若手経営者の支援や士業の開設・運営支援などに注力していることで注目されている。北周士弁護士は、奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人なだけに、困難な状況にいる人を支援したいという熱意に溢れている弁護士である。

*北弁護士のインタビュー記事

母子家庭で育った弁護士が語る「離婚問題で相談者のストレスを軽減させる」ことの重要性

弁護士が警鐘!なぜ法律トラブルも医療と同じく「早期発見、早期治療」が大切なのか?

 

■同時に120の事件を担当した経験が導き出した答えとは?

___ベンチャー企業や士業開業の支援を行なっているそうですが、その理由についてお聞かせください。

経済が良くなることが多くの人にとって最大公約数の幸せをもたらすと考えたからです。

私は、母子家庭ということもあり、奨学金を借りて高校・大学で学びました。そうした経験があるので、お金のない人でも相談できるような弁護士を目指していました。ですので、弁護士になって最初の4年間くらいは、債務整理、DV系の離婚、労使トラブル、外国籍の方の諸問題などに積極的に取り組みました。このような案件は、正直なところ報酬単価が低いので、数多く引き受けることで、なんとか生計を立てていましたね。最大で同時に事件を120件くらい担当していた時期もあります。

このような取り組みを行なって感じたのは、目の前の人は救えるのですが、キリがないなということです。焼け石に水のような感覚になり、徐々に無力感を感じるようになりました。

いろいろと考えた結果、お金に困窮している人たちにが、健やかに暮らしていくためには、やはり景気が良くなることが重要だと感じるようになりました。士業の開業支援を行なっているのも同じ理由です。士業が、企業を助けることで、企業が元気になり、企業が元気になることで、多くの雇用が生まれ、エンドユーザーであるお金に困窮するような人たちが助かると思ったのです。

 

___支援するベンチャー企業はどのような業種が多いのでしょうか?

IT系やコンサル系が多いですね。そのほかにも、服飾系の企業、農業系の企業、不動産、翻訳会社、家庭用医療機器メーカー、小規模な航空会社などもあります。共通しているのは、若い経営者が新しいコンセプトやマインドを持って、事業を行なっている企業という点ですね。

 

■企業規模が10人を超えはじめると労務・法務の問題が起きやすい

___ベンチャー企業の支援は、具体的にどんな相談が多いのか、またその要因についても教えてください。

2006年に、新会社法が施行されてから、資本金が1円からでも株式会社の設立が可能になって、起業するハードルがかなり下がりました。さらに、社会のIT化が加速するにつれて、起業する人の数は増えています。なかなか地方だと環境が整わないのですが、大都市圏、特に東京では、起業から数年のベンチャーが上場し株式公開したといった夢のようなサクセスストーリーに触れる機会も多いので、自分も起業してみようとチャレンジする人が割とめずらしくありません。

相談が増えてきているものの一つに、こうした若い経営者がいるベンチャー企業の労務・法務的な相談があります。私のクライアントは、8割~9割くらい25歳から45歳くらいの経営者になりますね。

そういったベンチャー企業は、法務部を備えるまでの規模でなく、法務要員もいないことが多いです。ですから、企業の外部法務部みたいな形の支援のニーズが増えているのだと思います。それと、小さい企業の経営者は、経営者自身がいかに機動力を持って動けるかというのが、収入に直結します。けれども、いろいろな雑務に追われている経営者が多いわけです。

また、会社が小さい時は、労務的な問題は起こりにくい。しかし、10人超えてくるあたりで、問題がおきはじめます。会社が小さいうちに、労務・法務に関する制度を整備していくのは賛同を得る人も少ないので非常に楽なのですが、大きくなってから整備しようとすると、非常に大変です。ですので、費用がかかったとしても、スタート段階で仕組みを作ってしまったほうが、その後の成長が楽になり、リスクマネジメントについても万全になるということを、もっと多くの起業家に知ってほしいですね。

 

*取材協力弁護士:北 周士(きた かねひと)弁護士(1981年生まれ、静岡県出身。本籍地は佐渡。長野県立上田高等学校卒業。中央大学法学部法律学科卒業。大学在学中の2005年に、司法試験に合格。青山総合法律事務所、安藤武久法律事務所を経て、きた法律事務所を開設。事務所名を北・長谷見法律事務所に変更し現在に至る。企業・個人を問わず困難な状況にいるクライアントの利益を最大化することを目標にしたサポートを行なっている。ベンチャー企業支援や、士業の開設支援などを得意分野にするほか、母子家庭で育った自身の経験をもとに、離婚問題や相続問題などに関する親切なアドバイスが評判の弁護士である。著書に『弁護士-独立のすすめ』(第一法規株式会社)、共著本に『弁護士 独立・経営の不安解消Q&A』(第一法規株式会社)などがある。)

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

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