今年5月、東京都小金井市のライブハウスで起きた、コンサート出演予定の女性がファンを名乗る男性に刃物で刺されたという事件をご記憶の方も多いと思います。
この男性は、上記犯行に及ぶ前にTwitter等を用いて繰り返し被害女性にメッセージを送っており、被害女性は武蔵野警察署に相談をしていました。ですが、同署は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)で対象とされているのは「電子メールを送信すること」(同法2条1項5号)であるため、同法の規制対象にはならないという認識だったようです。
このような事件があったこともあり、現在、ストーカー規制法が改正の流れに向かっています。11月18日には、参議院本会議において全会一致で可決され、衆議院に送付されました。
実際、どのような改正が行われようとしているのでしょうか、その背景とともに解説していきます。
■現行のストーカー規制法はどうなっている?
ストーカー行為等の規制等に関する法律では,以下のとおり「電子メールを送信すること」が規制対象となっており、SNSを利用したメッセージ送信等は対象となっていません。
第2条
1 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。(中略)
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。(中略)
2 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
しかしながら、SNSサービスによるメッセージ送信もストーカー規制法の対象とすべきであることは、平成26年8月に「ストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会 」が作成・公表した「ストーカー行為等の規制等の在り方に関する報告書」において、「SNSが普及し、ストーカー行為に用いられる実態があるが、例えば、拒まれたにも関わらずSNS上で執拗にメッセージ等を送りつけたりするなどの行為について、規制がないために対応が困難であった事例も認められる。」との認識が示されています。
これは、「SNSは広く一般に普及し、特に現在の若者等にとって生活に不可欠なツールとなっており、今後、SNSを利用したつきまとい行為は一層の増加が見込まれること、そして電子メールの連続送信が既に規制されていることとのバランスも考えれば、SNSを用いたメッセージの送信についても、速やかに法律による規制対象とするべきである。」との指摘を反映させたものだと考えられます。
- 1
- 2