波紋広がる過労死問題…会社を訴える「労災民訴」における3つの争点

②「安全配慮義務違反」とは、労働者の健康を守る義務に対する違反

安全配慮義務とは、会社が労働者の生命や健康を守らないといけないという義務のことをいいます。

不法行為責任と比較して、労働者側が会社側の安全配慮義務違反で、会社側の債務不履行責任を追及するメリットは、次の二つです。一つは、10年間請求できること。もう一つは、会社側が自分たちに落ち度がなかったことを証明しなければならないことです。

安全配慮義務違反が認められた事例としては、下記のようなケースがあります。

A、過労死や精神障害に陥った事例

B.過労で自殺してしまった事例

C.いじめや叱責により労働者がうつ病にかかり自殺した事例

D.業務中にアスベストの粉末を吸引した結果病気となり死亡した労働者の事例

 

③「取締役の第三者に対する責任」とは、経営者責任を追及する場合

労働者のご遺族としては、経営者の責任を追及したいということもあるでしょう。先ほど述べた不法行為責任を追及することもできますが、会社法上の取締役の第三者に対する責任を追及する、という方法(会社法429条1項)も考えられます。

「取締役の第三者に対する責任」という法的な言い回しは難しいですよね。取締役というのは、会社に対して責任を負うものですが、取締役が会社以外の人に対して責任を負う場合のことを「取締役の第三者に対する責任」といいます。

実際、取締役が長時間労働を承認していたにもかかわらず、長時間労働等により労働者が自殺した場合、取締役が任務を怠っていることについてわかっていた、または任務を怠ることについて重い落ち度があったとして、取締役の第三者に対する責任を認めた事例があります。

 

■3つの争点では証明をする人や請求期間が異なるので要注意

このように労災民訴では、不法行為責任、安全配慮義務違反、取締役の第三者に対する責任の3つの争点において、誰が主張し証明しないといけないか(主張・立証責任)、請求できる期間(「消滅時効」期間)がそれぞれ異なってきます。最も有効な請求をするために、我々弁護士を是非ご活用ください。

 

*著者:弁護士  鈴木謙太郎(1972年の設立以来40年以上の歴史がある、虎ノ門法律経済事務所の池袋支店で支店長を務める。注力分野は遺産相続、不動産取引、交通事故、債権回収、労働問題、債務整理、刑事事件、離婚等。「皆様の人生の一大事を共に解決するパートナーとして、真摯に業務に取り組んでまいります。」)

【画像】イメージです

*Dragon Images / PIXTA(ピクスタ)

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鈴木 謙太郎 すずきけんたろう

虎ノ門法律経済事務所 池袋支店

東京都豊島区南池袋2-12-5 第6.7中野ビル7FB号室

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