■法的に経営者が労働者への休日振替が認められるケースは2つ
もっとも、休日振替を無制限に許すと、就業規則等の労働契約で特定されている休日が労働日となるわけですから、労働者は困ってしまいます。そこで、休日振替が認められるためには、下記の2要件を満たす必要があります。
①労働者の合意があること(労働契約法8条)
②労働者の合意がなくても、契約上の根拠があり、同一週内での振替原則に反していないなど強行法規に違反していないこと(裁判例、水町勇一郎『労働法』)
①又は②の要件をみたすと、あらかじめ労基法上、休日と定められた日は通常の労働日となるので、割増賃金(労働基準法37条)を払う必要がなくなります。
■「代休」の場合は割増賃金の支払いが義務付けられている
「休日振替」に対して、時間外、深夜、休日労働の代償として、事後的に使用者が労働法上の労働義務を免除する措置を「代休」といいます(『労働法の争点』105頁)。
代休は、「休日振替」とは異なり、本来の休日がそのまま労働日として使用されたことになるので、使用者は非常事由もしくは36協定による休日労働の規定に依拠すること(労働基準法36条)を要し、休日労働に対しては割増賃金の支払いが義務付けられます。(岩出誠編『論点・争点現代労働法〔改訂増補版)』)
■Xさんの事例を解決するために必要なこととは?
本件事例は次のように解決します。
Y社による休日振替が認められるためには、裁判例より下記の3点が必要になると考えられます。
(1)就業規則に休日の振替に関する定めがなされていること
(2)所定休日が到来する前に振り替えるべき日を特定して振替手続が行われること
(3)休日振替によっても、4週4日の休日(労基法35条2項)が確保されていること
本件ではXさんが実際に休んだ日曜日「以前に」Y社による「休日振替がなされたと認めることはでき」ません。よって、Y社による休日振替は認められず、Xさんが取得した休日は代休になるので、Y社には割増賃金支払義務があり、Xさんの請求は認められます。
■読者に対するアドバイス
労働法を無視して本来労働者がもらえるはずの賃金・残業代がもらえないケースが多々あります。会社に言われて少しでもおかしいと思うことがありましたら、当事務所にご相談ください。
*著者:弁護士 鈴木謙太郎(1972年の設立以来40年以上の歴史がある、虎ノ門法律経済事務所の池袋支店で支店長を務める。注力分野は遺産相続、不動産取引、交通事故、債権回収、労働問題、債務整理、刑事事件、離婚等。「皆様の人生の一大事を共に解決するパートナーとして、真摯に業務に取り組んでまいります。」)
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