警察庁も呼びかけ!ヘッドライトの「夜間はハイビームが原則」は本当に法律で決められているのか?

夜間の交通事故が起きたときによく紹介される「夜間はハイビームが原則」という豆知識。

法令で定められているとおりに、ハイビームで走行していれば防げたのではないか、という交通事故は少なくないようです。先日も、警察庁の調査では、夜間に歩行者が道路横断中に車にはねられて死亡した事故625件(昨年1年間、全国)のうち、実に96%の車のライトがロービームだったと新聞で報道されていました。また、この調査結果を受け、9月21日からの秋の全国交通安全運動では、警察庁が夜間のハイビーム使用を呼び掛けています。

しかし、実際はハイビームにすると対向車や前方を走る車、歩行者がまぶしくて迷惑・逆に危ないという認識が、世間では一般的に浸透しているようです。今回は、道交法上では「夜間はハイビームが原則」は本当なのか、また、その他ライトに関して定められている規則について解説したいと思います。

※画像はイメージです:http://www.shutterstock.com

 

■「夜間はハイビームが原則」は法的に本当か?

結論からいうと、これは本当です。

道交法の解釈上、夜間(日没から日出時まで)に道路を通行するときは、他の車両と行き違う場合や他の車両の後ろを走るとき以外、ハイビームを点けていなければならず、これに違反すると5万円以下の罰金となります。

逆に、他の車両と行き違う場合や他の車両の後ろを走るときはロービームへの切替え操作を行わなければならず、これも違反すれば5万円以下の罰金となります。

 

■不正確な情報も広がっている

これらのことを紹介している一部のサイトや書籍では、「道交法上、ハイビームのことは『走行用前照灯』、ロービームのことは『すれ違い用前照灯』と言い、夜間は『走行用前照灯』を点けて走行しなければならない。『走行用前照灯』とは、夜間に前方100メートル先を照らすことができるものをいう。」などと書かれている場合がありますが、やや不正確です。

このように言う人がいたら、こう反論しましょう。

「いや、道交法には『走行用前照灯』や『走行用前照灯は100メートル先を照らすことができるもの』との文言はなく、『道路運送車両の保安基準』や『道路運送車両の保安基準の細目を定める告示』まで見ないとわからない。保安基準や告示も併せた道交法の解釈によって、夜間は走行用前照灯を点けることが原則とされているようなんだ。」と。

たぶん、非常にめんどくさいやつだと思われますが……。

 

■その他ライトに関する道交法などの規定

(1)夜間以外でもライトを点けなければならない場合

自動車を運転する人であればご存知だと思いますが、トンネルの中や霧がかかっている場所などで、視界が50メートル以下(一般道の場合)であるような暗い場所を通行するときと停車・駐車するときは、ライト(テールランプ含む)を点けなければなりません。

これも違反すると5万円以下の罰金となります。

(2)ハイビームの数は2個または4個

これも車検を通したことがある方ならご存知かもしれませんが、走行用前照灯の数は2個または4個と決まっており、6個以上または奇数の走行用前照灯を付けることはできません。

(3) 夜間かつ濃霧のときでもハイビームで走行しなければならない?

道交法の解釈で「夜間はハイビームが原則」とされている以上、濃霧の場合であってもハイビームで走行しなければならないのかという疑問が生じます。

しかし濃霧の場合、ハイビームにすると光が拡散してかえって安全運転義務に反しかねないこと、また、あくまで道交法等では濃霧の場合には前照灯(走行用前照灯ではない)を点けなければならないとされていることより、夜間かつ濃霧の場合はハイビームで走行しなくともよいと考えられます。

 

今回はライトに絞って解説しましたが、自動車の運転については他にも細かい規則がいっぱいあります。教習所や免許更新のときに習ったことを忘れず、違反のないように自動車を運転することを心がけるようにしましょう。

 

*この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

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木川 雅博 きかわまさひろ

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1-21-8 弁護士ビル303

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