【弁護士が解説】自宅にいながら被害者に…「受動喫煙」トラブルを証明するための2つのポイント

毒性のある副流煙がほとんど発生しないとされている加熱式たばこの登場で、大きく潮目が変わっていきそうな「受動喫煙」に関する問題。

とはいえ、戸建て、集合住宅のいずれであっても、ご近所さんが従来型のたばこを吸っていたら、その煙が自分の家に入ってくる、といったケースはまだまだあり得ます。

たばこが嫌いな方やぜんそくの方、小さなお子様がいる家庭にとっては、ご近所さんに対し、受動喫煙によって苦痛を被っていることを理由として損害賠償請求などを起こしたくなるかもしれません。

そこで、今回は、どうやって受動喫煙を証明するかなどについて解説したいと思います。

写真はイメージです:http://www.shutterstock.com/

 

■ある程度は受動喫煙を我慢しなければならない

喫煙自体は違法ではないので、隣人がベランダや部屋でたばこを吸って煙が入ってきた場合であっても、社会通念上許される範囲まではがまんしなければならないと考えられています(これを受忍限度論といいます)。

なお、他にも、生活騒音やにおいのトラブルなどについても受忍限度論が用いられており、社会通念上許される範囲を超えなければ違法と評価されません。

ご近所同士では、「お互い様」の精神である程度は我慢しましょうという発想です。

 

■受動喫煙があったことを証明する方法

受動喫煙の存在を証明して損害賠償請求をするには、まず、(1)相手がたばこを吸っており、煙が自分の家に入ってきていることと、(2)その煙の流入が受忍限度を超えていることの2つの証明が必要になります。

(1)については、写真、位置関係を表す図面、煙が入ってきている時刻等のメモ・報告書、陳述書、当事者の尋問等によって証明することになるでしょう。

(2)については、診断書、煙の流入量についての報告書・陳述書、デジタル粉じん計等のたばこの煙濃度測定器による測定結果、当事者の尋問によって証明することになります。また、空気清浄機を置くなどの防止措置を講じても効果がなかった(薄かった)ことを主張・立証することが重要になるでしょう。

そして、受動喫煙により苦痛を被ったり体調を崩したりしたという損害の発生も証明する必要がありますが、これは診断書、陳述書や当事者の尋問によって立証していきます。

 

■裁判で勝訴しても、賠償額は割に合わない可能性も

以上のような立証を十分に行っていけば、損害賠償請求が認められる可能性があります。

もっとも、勝訴したとしても、過去の裁判例で認められた金額は5万円程度と低額ですので、時間と費用を考えると割に合わないといえます。

他方、当然ですが喫煙者の方は、「お互い様」の精神で許される範囲を超えて喫煙を継続すると違法になることを念頭に置き、たばこが嫌いなご近所の方に配慮をすることが重要です。

 

*この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

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木川 雅博 きかわまさひろ

星野・長塚・木川法律事務所

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