2016年8月12日、東京都・日野市でスマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』をプレイしながら歩いていた女性の背後から抱きつき、下半身を触るなどの「わいせつな行為」をしたとして、警視庁が同市内の会社員(25歳)を逮捕。『ポケモンGO』の歩きスマホ問題が連日世間を賑わしている中、このニュースも話題となっています。
一方、同日には「みだらな行為」をしたとして、富山県青少年健全育成条例違反の疑いで、県東部の公立中学校の教諭(26歳)を富山中央署が逮捕した、との報道もありました。
このように「わいせつな行為」や「みだらな行為」という言葉は頻繁にニュースに登場しますが、新聞やテレビなどの各報道機関では明確にこの言葉を使い分けて使用していることを皆さんはご存知でしょうか。
実際のところ、“性的なイヤらしい行為”をしたんだろう程度の認識で、具体的にはどのような行為を指すのかまでは知らない方も多いと思います。そこで、このふたつの言葉について法律的な視点から解説していきたいと思います。
■18歳未満の未成年が対象となるのが「みだらな行為」
まずはそれぞれの法的な解釈を説明すると、下記のようになります。
◆わいせつな行為:国が定めた犯罪とそれに対する刑罰の関係を規律する法である刑法の言葉。刑法176条・強制わいせつ罪「13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。」とされている。
◆みだらな行為:各都道府県の条例の一つ、青少年保護育成条例に登場する言葉。例えば東京都青少年健全育成条例18条の6「何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為をおこなってはならない。」とされている。
このふたつを比べたときの一番の違いは、「わいせつな行為」は対象者を13歳以上の男女に定めているのに対し、「みだらな行為」では対象を18歳未満の未婚者のみに限定している点です。
つまり、「みだらな行為」と表現されているケースでは、被害者は18歳未満の青少年を指しています。はじめに紹介したふたつの報道でも「わいせつな行為」では被害者は20代女性、「みだらな行為」では被害者は18歳未満の少女でした。
■性行為の有無も表現の違いに紐づく
また、ふたつの「行為」の実際上の違いにフォーカスすると、青少年保護育成条例の「みだらな行為」では“性交を含む”のに対して、刑法176条の「わいせつな行為」では“性交を含まない”という点が一番の違いとなります。
ですから、18歳以上に対する痴漢行為は「強制わいせつ罪」となります。ちなみに、刑法では暴行や脅迫を用いて性行為に至った場合には、「強姦罪」という別の犯罪となり、罪の重さも異なります。
なお、成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げるための民法改正案が来年の通常国会にて提出される方針が固められたと、8月14日に政府関係者が発表しました。これを受けて、ゆくゆくは「わいせつな行為」と「みだらな行為」の表現の範囲も異なってくるかもしれませんね。
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