障がい者の居眠り姿をネットに投稿、なぜ侮辱罪に?

電車の中で居眠りしていた女性をスマートフォンで無断撮影し、「わらいとまんない」というコメントとともにツイッターに投稿したことが侮辱罪に当たるとして、12月10日、札幌市の高校2年の女子生徒が書類送検されたと報道されています。

侮辱罪とはどのようなときに適用されるのか、今回なぜ侮辱罪が適用されたのか、検討してみましょう。

電車酒Ushico / PIXTA(ピクスタ)

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■侮辱罪と名誉毀損罪の保護法益は実は同じ

侮辱罪は、「公然と人を侮辱」した場合に成立するところ、どういう状態になれば「侮辱」したといえるのかが問題になります。これは、侮辱罪の保護法益を考える必要があります。

侮辱罪の保護法益を名誉感情とすると、個人が不快だと感じれば侮辱罪が成立することになります。しかし、これでは人によって侮辱罪が成立するかどうかが異なってきます。

実務上は、外部的名誉(社会的評価)が侮辱罪の保護法益であると解されています。つまり、第三者から見た社会的評価が毀損される状況になるのであれば、侮辱罪が成立するということになります。

名誉毀損罪の保護法益もこれと同様で、両者の違いは「公然と事実を摘示」(刑法230条1項)しているか否かという点になります。

 

■今回の行為は名誉毀損にもなるはず

本件は、報道によると顔に障害のある方の写真が無断撮影され、Twitter上にアップされたようです。

写真をアップすれば、写真により示された具体的な事実の摘示があるといえることになります。そのため、写真がアップされたことで、「公然と事実を摘示」したということができる余地があります。

そして、「わらいとまんない」とのコメントを付すことで、障害をあざ笑っているわけで障害ある人の社会的評価を下げるといえる余地があります。したがって、公然と事実を摘示して人の社会的評価を下げているため、名誉毀損にもなるのではないかと思います。

 

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■なぜ侮辱罪となったのか

この点は必ずしも明らかではないのですが、いくつか可能性が考えられます。

まず、「わらいとまんない」とのコメントが付していることからすると、写真は意見や感想をいうために投稿されていると判断できるため、事実を摘示するものではないと評価された可能性が挙げられます。

次に、2時間ほどで削除されたという事情があるようであり、実際の侵害の程度は比較的軽微といえます。そして、侮辱罪は「事実を摘示しなくても」としているので、事実の摘示がない場合であっても成立し得ます。そのため、法定刑の重い名誉毀損罪ではなく侮辱罪として処理した可能性があります。

最後に、比較的ある可能性として、警察が侮辱罪の保護法益を名誉感情であると考えていて、侮辱罪としたというものです。

 

■民事上の責任も発生する

刑法上違法なことをしている以上、民事上も不法行為に当たるというのが通常の考え方です。そのため、このような行為は不法行為(名誉権侵害やプライバシー権侵害)として、損害賠償請求をすることができます。

本件は2時間ほどで削除されたということで被害としてはそこまで大きなものではないにもかかわらず、警察発表があり、報道されました。これは一般予防のため、すなわち同種の行為をしないように啓発する意味があるのではないかと思われます。

今後も同じようなことをすれば摘発していくという意思を示しているようにも見えます。そのため、安易な投稿で人生を棒に振ることがないよう、投稿ボタンを押す前に一度深呼吸をしてみるべきでしょう。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

*写真はイメージ / 電車酒Ushico / PIXTA(ピクスタ)

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清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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