てんかんの症状をもつ方が平成23年4月に鹿沼市(栃木県)で発生したクレーン車による交通死亡事故や平成24年4月に京都(祇園)で発生した交通死亡事故を起こしたことを契機に、道路交通法が改正されました。
また、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」が新たな法律として施行されています。
このように昨今は、てんかんの症状をもつ方に対して厳しい法改正等が行われていますが、従来はてんかんと診断された方には一律運転免許を与えることができない時代がありました。
それが、平成13年の道路交通法の改正により、てんかんをもつ方にも原則普通運転免許を付与することができる内容に変わりました。
●免許の付与が禁止されるケース
現在では例外的に、てんかんの症状をもつ方であっても、運転免許の試験に合格した場合は、「政令で定める基準に従い、免許(省略)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。」と規定されるにとどまっております。
この「政令で定める基準」とは、「発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するもの」であり、こういった症状ではないてんかん患者についてのみ、例外的に免許を与えない、また、留保するという形になっています。
なお、こういった形で免許の付与を例外的に禁止するのは、なにもてんかんに限ったことではなく、統合失調症や低血糖症などについても同様です。誤解の無いようにお伝えしておきます。
●免許を付与できるようになった背景と課題
てんかん等の症状をもつ方に対しても運転免許を付与できるようになった背景には、医療の進歩はもちろんのこと、てんかん患者への不要な偏見を避ける目的があると思います。
ただ、冒頭にお伝えした事件を受けて法改正が行われ、てんかん等の症状につき免許取得時等に質問することができ、虚偽の回答を行った場合に罰則が科されるという形になりました。
こういったルールは、プライバシーとの衝突がある領域ではありますが、てんかん等の症状が重大な交通事故を引き起こす可能性があることから、必要最小限の内容として許容せざるを得ないものであると思います。
新たに出来たルールが適正に運用され、結果として重大な交通事故が無くなることに繋がればいいですね。
ただ、冒頭のような事故が起きたからといって、てんかんの患者さんに対して偏見を持つということは絶対に避けられるべきだと思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)