スマートフォンで画像が共有できるアプリに投稿された児童ポルノ画像を、閲覧できる状態のまま放置したとして、アプリ運営会社の社長が逮捕されたと報じられています。
報道によると、児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)のほう助の疑いが持たれていて、アプリ運営者側が摘発されたのは初ということのようです。
では、この罪はそもそもどのような状態になれば成立するのでしょうか。
■公然陳列のほう助とは
まず、「ほう助」という言葉ですが、あまり耳慣れない人もいるかもしれませんが、「助ける」という意味の言葉です。ごく簡単にいえば、犯罪の手助けをしたといえる場合、ほう助犯が成立することになります。
次に、児童ポルノの公然陳列ですが、児童ポルノは、児童の性交等や性的部分が露出・強調されている写真やデータであり、これが公然と陳列している場合に成立することになります。
そして、「公然と」というのは、不特定または多数の者が認識できる状態をいうとされており、現実に不特定または多数の者が認識しなくても、その可能性があれば満たされるとされます。また、「陳列」というのは、不特定多数の者が観覧できる状態に置くことであり、有償・無償を問いません。
このアプリでは、投稿者が設定した「合言葉」を入力すればほかの利用者も閲覧できる仕様になっていたようです。「合言葉」は一種のパスワードのようなものといえますが、「合言葉」が公開されているケースもあったようです。
このような「合言葉」が公開されているケースであれば、「合言葉」は容易に知り得るわけで、パスワードとしての意味はないので、実際上、誰でも閲覧できる状態だったといえます。
そのため、このようなケースであれば、不特定または多数の者が認識でき、観覧できる状態であたっといえるため、児童ポルノ禁止法の公然陳列に当たるということになります。
■なぜアプリ運営会社側が摘発されたか
報道によると、アプリに投稿されている画像の3~4割が児童ポルノであるとされています。
実際に摘発された理由としては、児童ポルノを普通にアップすれば、すぐに削除される状況がある中で、アプリ運営会社は、その公然陳列の場所を提供した(=公然陳列を助けた)といえるからでしょう。
しかも、報道によると、児童ポルノを公開したアプリ利用者が摘発された際に、アプリ運営会社も警察から口頭で注意を受けていたにもかかわらず、その後も放置し続けたとされています。
仮に投稿されている画像の3~4割が児童ポルノであったということであれば、児童ポルノに当たる画像がアプリに公開されているということは気付くことができたと思われます。
特に、警察から注意を受けたこともあるということであれば、なおのこと知りながら放置していたと評価できる可能性が高まります。
■ダウンロードしたユーザーは処罰される?
児童ポルノをアップロードした人は、ほう助ではなく、公然陳列の正犯となります。では、ダウンロードした人はどうなるでしょうか。
児童ポルノ禁止法は、現在では、児童ポルノの単純所持を禁止しています。ダウンロードした人は単純所持をしていることになり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています。
今後、ダウンロードした人が摘発されるかどうかは分かりませんが、児童ポルノの単純所持も違法になったということは、改めて認識しておくべきでしょう。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
※画像は写真袋の公式サイトのスクリーンショット