先日、アメリカでオナラが悪臭すぎることを理由に解雇された男性の妻が、不当解雇であるとして会社を訴えたというニュースが話題になっていました。
常識的に考えてそんなことで解雇されるわけがないという意見がある一方、実際問題として「飲食店等で体臭がきついのはちょっと……」、「職場の上司・同僚の体臭がきつくて悩んでいる」というケースも時折ありますので、今回は、オナラのにおいや体臭がきついことが解雇理由になるのかについて解説したいと思います。
●オナラのにおいや体臭がきついことだけでは解雇理由にならない
会社が従業員を解雇するためには、(1)就業規則に定めがあること、(2)解雇に客観的合理性と相当性があることが必要です。
オナラのにおいや体臭は本人の努力だけではどうしようもないことが多いですし、そのこと単体のみでは就業規則に定められた解雇理由に当てはまるものはないといえます。
したがって、たとえ接客業や営業職であったとしても、においがきつすぎるという理由のみでの解雇は合理性と相当性を欠き無効です。
●解雇が有効となり得る場合
もっとも、従業員本人の努力で体臭が改善できる場合には、解雇が認められることもあります。
たとえば、においの原因が病気によるものではなくお風呂に1週間近く入っていないなど不潔にしているだけの場合や、デオドラントスプレーを用いる等の配慮をしていない場合は、本人が努力を怠っていることになります。暴飲暴食を繰り返して故意にくさいオナラをし続ける場合も本人に責めがあるといえますね。
また、においの原因が病気にあるとしても、適切に治療を行えば改善の見込みがある場合には本人の努力で改善が可能であるといえましょう。
このような場合に、会社が従業員に対して適切な指導、注意、監督を繰り返し行ったにもかかわらず従業員に改善の見込みがないといえるときは、業務命令違反や適格性欠如を理由として解雇が有効となるでしょう。なお、会社としては、いきなり解雇するのではなく配置転換を行うなど段階を踏むとベターといえます。
以上のように、オナラのにおいや体臭がきついことだけでは解雇されることはありませんが、本人の態度によっては解雇が相当とされるケースもあります。においの原因は人それぞれでしょうが、社会人として常識的な配慮を行うことが大事ですね。
- *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)