■氏の変更が認められるケース・認められないケース
氏の変更が認められたケースとしては、婚姻後の夫婦関係や離婚後の元夫婦関係のトラブルに伴うものが主であり、その他、性的虐待を受けた申立人のケースで認められたものも見受けられます。
しかし、前科者が氏の変更を求めたとあるケースでは、心機一転して更生したいという理由だけでは「やむを得ない事由」があるとはいえないとして、変更不許可となっています。
元暴力団員のケースでも、過去の経歴が社会生活を送るうえでの支障になる、更生のために不当な関わりを絶つという理由で氏の変更を申し立てるケースが少なくないようですが、実際に認められるものはかなり少ないようです。
■「元少年A」のケース
雑誌では、元少年Aのケースは「超例外的措置」と表現されていますが、前科者や元暴力団組員の改姓のハードルが高いことを考えると、そのような表現がなされることも無理はないように思います。
それだけ、「元少年A」が起こした事件が、社会的に大きな影響を及ぼし、事件から時を経ても世間の関心を集めているという点で、名だけでなく氏も変えなければ、元少年Aの社会生活に著しい支障をきたすと判断されたということなのでしょう。
出版やホームページの開設など何かと話題の彼ですが、それゆえに変更後の氏名が広く知れ渡ることとなっても、2度目の改姓改名はさらにハードルが高くなることが予想されます。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
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