罪を犯した20歳未満の少年に対しては、成人の刑事事件とは異なり家庭裁判所で審判を行うことはご存知だと思います。
また、審判の種類には、保護処分(少年院送致や保護観察など)だけではなく、検察官送致(いわゆる逆送)があることを知っている人も多いかと思います。
では、どんなときに検察官送致(逆送)が行われるのか、検察官送致となった少年はどうなるのかについて、簡単に解説したいと思います。
●検察官送致ができる場合は限られている
少年審判の目的は、成人の刑事事件と異なり、罪を犯した者を罰するのではなく、少年の非行性を取り除き、将来の犯罪予防と少年を更生することにあります。ですから、成人の刑事事件のような厳格な手続は行われないし、少年審判は非公開です。
そこで、少年法は、一定の重大事件を起こした少年についてのみ検察官送致をすることができると定めています。
検察官送致をすることができるのは、(1)死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、犯罪の性質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき、(2)犯罪のときに16歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件を起こした場合で、かつ、調査の結果、刑事処分以外の措置が相当でないときの2つの場合です。
●検察官送致となった少年は成人と同じ刑事手続になる
検察官送致となった場合は、成人と同様、公開の法廷で審理され、判決を言い渡されることになります。
もちろん有罪の判決が言い渡されれば前科となりますし、実刑判決だった場合には少年院ではなく少年刑務所に入ることになります(ただし、16歳未満の場合は少年院で懲役又は禁錮刑を執行することができます)。
なお、少年は審判までの間に大人と同じように逮捕・勾留が行われているため、検察官送致後にさらに勾留が続くと、かえって大人よりも身体拘束が長くなる場合もあります。
少年事件を扱うと、本当に少年は大人よりも可塑性・更生可能性があるなと感じています。
犯罪の重大性や被害者の感情は十分に考慮すべきですが、少年が二度と過ちを犯さないためには保護観察または少年院送致がよいのか、それとも検察官送致がよいのか、家裁には熟慮してほしいと思っています。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
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