・男性従業員が自殺を図ったのは長時間労働が原因と労災認定された
・月の残業は162時間で、過労死の目安80時間を大幅に超えていた
・出退勤の記録はなかったが妻との携帯メール459通が証拠になった
上記の記事がネットで話題になっています。
タイムカードがない職場において、残業時間や労働時間を記録として残し、残業代を請求したり、労災の申請や、会社を相手に訴えるなどする場合、労働時間の証拠を残す上で理想的な方法、具体的な方法などはあるのでしょうか?
そもそも残業代が付く職場でタイムカードがないのは違法です。そのような職場では働かないことです。あるいは、最初はタイムカードがあったが、その内なくなったような場合は、すぐに労基署に届け出て是正をしてもらうべきです。
上記の記事の事例では、なくなった従業員は、主任になり、残業代が付かない職種となりました。そのため、タイムカードを利用しなかったものと思われます。とは言え、80時間を超えるような長時間の残業が許されるものではありません。
※36協定があれば80時間を超える残業も許される場合もありますが、ここでは説明を省きます。詳細は下記を参照して下さい(三六協定の基礎知識-10のポイント)。
それでは労働時間の証拠を残す具体的な方法を紹介していきます。
●日記をつける
従業員が後の紛争に備え、自分の労働時間を記録しておくことは必要だと思います。
一番簡単な方法は、日記をつけることです。日記でも毎日つけていれば、証拠として証明力は高いと判断されます。毎日つけなくて、気付いた時だけつけていると、証明力は弱いです。
面倒でも毎日つけることです。今は、スマホで簡単に日記をつけられますので、利用すると良いです。日記には、上司とのやりとりや気付いたことを書いておくことです。労働時間の記録だけではなく、セクハラやパワハラの証拠にもなります。
●家族とメールやLINEをおこなう
記事にあるように、家族とのメールやLINEのやりとりも証拠となります。メールやLINEの利点は、書いた時間が記録されることです。紙の日記だと後から書いたものと判断されると証明力が弱まりますが、退社直後にメールしたりLINEしたりすれば、証明力は高くなります。
これも、毎日することが大事です。毎日メールしたりLINEしたりすれば、証明力は高くなります。スマホを利用した日記でも書いた時間が分かれば同様に証明力は高くなります。
●業務日報をコピーしておく
会社によっては、業務日報を提出することもあります。業務日報を提出する前に自分用にコピーを取っておくことも良いと思います。会社は紛争になると業務日報を裁判所に提出しなかったりあるいは破棄したりしますので。コピーを取るのが大変なら、スマホで写真に撮るのも良いです。
●上司とのメールを残しておく
家族とのメールよりも証明力が高いのは、会社の上司とのメールです。仕事が終了する度に上司にメールで報告しておくと後に有力な証拠となります。仮に、メールに嘘が書いていれば、上司がすぐに訂正するはずだからです。報告メールも毎日出すことです。
●なによりもまずは相談
いろいろと証拠になる方法を書きましたが、一番大事なことは、おかしいと思ったら、労基署、労政事務所、労働組合あるいは弁護士会など、公的な機関に相談することです。
過労死した後に遺族が賠償金をもらっても嬉しくはありません。過労死しないように職場環境を良くするよう公的機関に相談するか、場合によっては、転職を考えて下さい。
また、家族の方も労働者の様子がおかしいと思ったら、すぐに医師に相談したり、上記の期間に相談してください。不幸な過労死はなくさないといけません。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
*yokotaro / PIXTA(ピクスタ)