「おっさんレンタル」「レンタル彼氏」と呼ばれるサービスが注目されています。
サービス内容はその名の通り、おっさんや彼氏(と呼ばれる男性)を1時間1,000円から7,000円程の料金を支払いレンタルできるというものです。人生相談や散歩や買い物のデートを楽しんだりと活用方法はひとそれぞれであり、そこそこの需要もあるようです。
これは家庭教師の紹介みたいなものだと考えられますので、トラブルが起きない限りは法的にもセーフではと考えます。
以下では、いくつか検討した法律を述べたいと思います。
■各種労働規制に違反しないか
「おっさん」や「彼氏」が運営者との関係で労働者と法的に評価できる場合には各種労働規制を守らないといけません。
仮に労働者と評価されお客さんの言うことに従わなければいけないということであれば派遣事業になるので、運営者は事業形態によって許可を得たり届出したりする必要があります。
労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。
どういった作業を、どこで、いつからいつまで、どのようにやるかといった点について具体的な指示・命令を受ける場合、事業に使用される者ということで労働者と評価される可能性が高くなります。
一方、どういった作業を、どこで、いつからいつまで、どのようにやるかといった点について、自分の自由な意思で承諾したり拒否したりできるのであれば労働者と評価される可能性が低くなります。
「おっさんレンタル」も「レンタル彼氏」もホームページを見る限りでは運営者やお客さんから拘束を受けるような立場ではなく自由に依頼を受けたり断ったりすることができそうですので、労働者と評価されることもないのではと思います。
■風営適正化法に違反しないか
風営適正化法では、性風俗関連特殊営業を営む場合、公安委員会への届出が必要となって営業の仕方も規制されます。
テレクラが性風俗関連特殊営業として規制の対象となっているので、「レンタル彼氏」も規制の対象となるかどうか?
この点、性風俗関連特殊営業にも色々ありますが、無店舗型電話異性紹介営業に当たるかどうか問題となりそうです。
しかし、無店舗型電話異性紹介営業とは、「専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む)を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによって営むもの」であると厳密に定義されていますから、ツーショットダイヤル・伝言ダイヤルといった無店舗型テレクラに限られそうです。
「レンタル彼氏」の場合、「専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む)を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業」までのところは当てはまりますが、「その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによって営むもの」に当てはまりません。
したがって、今後どうなるかわかりませんが、今のところ風営適正化法に違反することもないのかと思います。
■想定されるトラブル
お客さんとの間で、写真やプロフィールと実物が違う、「おっさん」・「彼氏」が約束の時間にやってこない、お金を騙し取られた、お金返せ、責任を取れといったトラブルが考えられそうです。
この場合、運営者の方も、関与の仕方によっては、「私はおっさん・彼氏を紹介しただけ。私は関係ない。」では済まない場合もあるかと考えます。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*写真:Ushico / PIXTA(ピクスタ)