■逮捕の仕組み
逮捕とは、被疑者の身柄を拘束して逃亡や罪証隠滅を防止するために行われる強制捜査の手段で、現行犯逮捕と通常逮捕、緊急逮捕の3種類あります。
現行犯逮捕は、まさに犯罪行為を行っている最中か、犯罪行為が終わって間もない時期に令状なしで逮捕できる制度です。
現行犯の場合、誤認のおそれが低く、かつ緊急性が大きいことから、刑事訴訟法ではなく、憲法本体に逮捕状なしでの逮捕ができる旨規定されています。
緊急逮捕は、一定の重大犯罪について、逮捕後の令状取得を認める制度です。
逮捕は、基本的には、事前に裁判所から令状を取得してから、通常逮捕の形で行います。
よく耳にする公開捜査と指名手配とは、刑事訴訟法上の逮捕の種類・概念ではなく、捜査手法の区別にすぎません。
したがって、例えば、通常逮捕で裁判所に令状請求するときに、公開捜査とするのか、指名手配として逮捕するのかといった事項は報告されず、また令状発布時にどちらかで捜査しなければならないといった制限があるわけでもありません。
■指名手配と公開捜査
指名手配とは、捜査用語で、管轄以外の全国の警察に被疑者の逮捕と、逮捕後の身柄引き渡しを要請する制度です。
例えば、千葉で起きた事件の被疑者は、千葉県警が全国で探して逮捕するのが原則ですが、他の県警に協力を要請し、逮捕を求めることもでき、これが指名手配です。
他方、公開捜査は、さらに一歩進んで、逮捕したい被疑者の捜査情報を一般にも公開し、他の県警だけではなく、一般市民にも情報提供を呼びかける制度です。
被疑者の行方が全く掴めず手がかりが乏しい場合に情報がもたらされるメリットがありますが、捜査側の手の打ちを見せることになり、かえって被疑者の逃亡、証拠隠滅が容易になる危険もあります。
指名手配が乱発されると、全国の警察の業務量がパンクするおそれもあり、指名手配と公開捜査は、それぞれのメリット・デメリットを考慮して、事件ごとに慎重に採用を判断し行われています。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*画像:Shi Yali