5年に1度の国勢調査が始まりました。国勢調査は統計法という法律に基づき行われるもので、拒否した際の罰則まで規定されています。
そんな国勢調査ですが、総務省のホームページを見ると、国勢調査に乗じた詐欺や情報取集が横行しているようです。その内容や目的を紹介していきましょう。
●「かたり調査」の内容とは
この情報収集を「かたり調査」と呼んでいるようですが、国勢調査や調査員をかたって、世帯構成や資産状況、あるいは銀行口座やクレジットカードの暗証番号を聞き出したり、挙句の果てには金銭を要求したりする人間がいるとのことです。
資産状況、銀行口座やクレジットカードの暗証番号などは国勢調査で聞かれることがないため、仮に質問されたとしても怪しいと気づく可能性はあるのですが、世帯構成は本当の国勢調査で質問される事項ですので、怪しいと気づくことはかなり困難です。
●手に入れた情報の価値
詐欺グループにとっては、世帯構成というのは非常に貴重かつ重要な情報です。
振り込め詐欺の被害に遭いやすいのは高齢者、特に女性高齢者の単身世帯です。その世帯が女性高齢者の単身世帯であるという情報は、詐欺グループにとって垂涎の的であり、またその情報は高値で売買されます。
ですので、仮に金銭が取れなかったとしても情報を取得するだけでも詐欺グループにとっては大きな収穫となるのです。
●9月20日以降、かたり調査が横行する可能性が高い
9月20日までにネットで回答しない場合に、調査員が実際に訪問し、調査票を回収するそうですので、ここで詐欺やかたり調査が横行する可能性が高いと思われます。
かたり調査には絶対に引っかかってはいけませんが、ただ、一般の人にとって、自宅に来た人が調査員かどうかは容易に判別がつきません。
総務省によると、調査員は国勢調査員証を携帯しているとのことですが、そもそも私たちはこの調査員証というものを見たことがありませんので、調査員証を提示されても本物かどうか判別できませんし、また、ネットを見る限りでは容易に偽造できそうなものでしたので、詐欺グループであれば調査員証の偽造というのは容易に行うでしょう。ですので、調査員証の確認というのはあまり効果がないのではないかと思ってしまいます。
とすると、詐欺やかたり調査を防ぐためには、仮に調査員が訪ねてきたとしても、安易にドアを開けず、個人情報を告げず、少しでも怪しいと思ったらためらわずに役所や国勢調査のコールセンターに電話して確認する、という原始的な方法しかないのではないでしょうか。
国勢調査の必要性を否定するつもりは毛頭ありませんし、当然、今後も継続して行わなければならないものですが、同時に、詐欺グループにとっては千載一遇のチャンスでもあります。これ以上詐欺被害が増えないように、総務省、各自治体では万全の対策を取ってもらいたいものと思います。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
*画像:Graphs / PIXTA(ピクスタ)