残された家族のために必要な制度「失踪宣告」とは何か

行方不明遭難捜索

■失踪宣告って何?

あまり一般に馴染みのない制度ですが、一定期間、生死が明らかでない者がいる場合に、配偶者などの利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪を宣告し、死亡したものとみなす、という制度です。

例えば、災害や遭難事故などの災難があった場合、不幸なことに遺体すら発見されない事態が生じます。

そうすると、家族としてはもちろん生存を信じ続けますが、法律関係においては、生死不明な状況ではいろいろな不都合があります。

というのも、法律上の権利義務関係は、基本的には生きている人を対象に発生し、死者には権利義務がありません。

つまり、死者は権利を享有する主体にはなれないということです。

したがって、多くの法律関係において、人が生きているか、そうでないのかは、権利関係に大きな影響を与えることになります。

死亡したとみなすには、いつから数えて7年なのかという疑問があるかと思いますが、法律上、最後に連絡をとってから7年になっています。最後の連絡を証明する方法は、携帯電話の着信記録・会社の出勤記録などが当てはまります。
捜索願も立派な証拠になりますので、行方不明者がいなくなって警察に届け出をだした人は捜索願を証拠にするといいでしょう。
引用元:失踪者が法律上死亡したとみなされるのは7年|失踪宣告の手続き方法

 

■どういうケースで使える?

わかりやすい例でいうと、人の生死が直接影響する場面に、相続があります。

相続は、人が死んだ時点で発生しますが、遭難や災害で遺体が発見されないと、明確に「死亡」の事実を確定できません。

しかし、残された家族としては、生死不明者の財産や債務を整理しなければならない事態に直面します。

そこで、生死不明状態が7年間経過した時点で配偶者等の利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告をして、死亡したものとみなすことができるようにしたものです。

また、船の沈没や戦争、自然災害などにより生死不明となった場合は、危難が終わった後1年間経過すると、失踪宣告が可能となります。

相続以外にも、配偶者が生死不明のままだと、再婚もできませんが、失踪宣告により配偶者の死亡が擬制されれば、婚姻関係は当然に終了し、再婚も可能となります。

失踪宣告は配偶者などの請求によってなされますので、配偶者などの意向を無視して自動的に裁判所から失踪が宣告されるわけではありません。

 

■死亡の取消ができる

失踪宣告はあくまで生死不明者について死亡とみなす制度ですから、失踪宣告後に、生存が判明した場合は、本人または利害関係人の請求があれば、失踪宣告は取消となります。

一見冷酷にも思える失踪宣告の制度ですが、残された家族の現実の生活を考えると、なくてはならない制度です。

参考サイト:失踪宣告をする方法と流れ|見つかった場合の失踪宣告を取り消す方法

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)

*KEI- / PIXTA(ピクスタ)

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星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

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