■もし男性だったら、捜査に違いはあるか?
仮に、今回この女児を保護したのが男性だったら、事態は異なっていたでしょうか。
個人的には、まず、かけられる容疑に違いが出るのではないかと思われます。先に挙げた2つの罪名に加え、強制わいせつや強姦などの性犯罪の該当性も念頭に置いたのではないかと予測されます。
近所の人に対する聞込みにより、過去に同じような出来事はなかったか、トラブルはなかったかなども、保護した人が女性の場合よりも詳しく調べたのではないかと思われます。
男性に対する任意の事情聴取も、女性よりも長時間、厳しく行われる可能性もあったでしょう。男性から任意でDNAを採取し、女児の体表や体内に精液が付着していないかなどを調べた可能性もあると思います。
このように、深刻な容疑が1つ増えることから、男性の場合には、身体を拘束する逮捕という措置を採る前に、「任意」つまり、強制的な権限を発動しない捜査は、かなり詳しく行われる可能性が高いのではないかと思います。
■逮捕された可能性はどうか?
あくまで私見ですが、保護した人が男性だった場合でも、最終的に逮捕される可能性はかなり低かったのではないかと思います。
仮に誤認逮捕となった場合、男性の名誉は大きく傷つけられることになり、場合によっては、警察が男性に謝罪、最悪の場合には賠償問題に発展する可能性もあります。
警察としては、このような不祥事は回避したいと考えるでしょう。女児の様子が落ち着いており、かつ女児の言い分と男性の言い分がおおむね一致しているということであれば、事情聴取に男性が応じている状況下では、逮捕しにくいと思います。
そして、裏付け捜査の結果、特に目立った問題がないということであれば、逮捕は回避されるのではないかと思います。
わかりやすく言えば「男性の方が逮捕されるリスクは高かったかもしれないが、最終的には逮捕されなかった可能性が高いだろう」ということになります。
先に挙げた車で子どもを送った件や、痴漢冤罪など、男性はなにかと濡れ衣を着せられやすい気の毒な立場にあるといえそうです。もし親切心でしたことによりトラブルに巻き込まれそうになった場合には、まずは弁護士に対処方法を相談してみることをおすすめします。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
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