■八百長自体を取り締まる法律はない
八百長とは真剣に勝負をしていると見せかけながら事前に示し合わせたとおりに勝負の決着を付けることをいいますが、なんらかの利益供与がない場合の八百長自体を取り締まる法律はありません(厳密には、競馬やサッカーの場合、勝負の公正を害する態様の八百長も禁じられているといえますが)。
たとえばカド番の力士から負けるように依頼された取組相手が、かわいそうだという思いから負けてあげた場合は違法にはなりません。
■公営競技で利益供与を受けて八百長をした場合はどうなるか
現在、日本には競馬、競輪、競艇、オートレースの4つの公営競技(公営のギャンブルとして開催される競技)があり、法律で利益供与を伴う八百長を禁じています。また、サッカーもサッカーくじ(toto)が発売されているためギャンブル性がありますので、同じく法律で利益供与を伴う八百長を禁止しています。
公営競技において利益供与を伴う八百長をした場合は、利益を提供した者とされた者の双方に対して懲役刑や罰金刑が科される旨が各法律で定められています。
公営ギャンブルとしての公正さを害することになるので当然ですね。
■非公営競技で利益供与を受けて八百長をした場合はどうなるか
相撲のような非公営競技(公営のギャンブルとして開催される競技ではないもの)の場合、特別法で罰則が定められているわけではありません。
しかし、利益供与を受けて依頼されたとおりに勝敗を決すれば賭博罪や詐欺罪の共犯となり得ます。自分が利益を受けなくても、第三者に利益を与えることを認識していれば共犯になりますので注意が必要です。
法的には以上のとおりですが、利益供与を伴わない八百長であっても各競技界の規定によって出場停止や追放等の処分が下ることになります。
八百長が発覚した場合はほぼ間違いなく選手生命が失われることになります。各選手には、プロとしての誇りを持ち、八百長を行って観客やファンの期待を裏切ることをしないよう期待しています。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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