■催眠術にかけられた人が犯罪を犯した場合
上記のとおり、心神喪失状態になっていれば、責任能力が否定される場合があります。
■催眠術をかけた側
他人を催眠術で陥れて自己の完全なコントロール下にした者は、催眠術にかかった他人を犯罪の「道具」として使用したものと同視され、自己(催眠術をかけた者)の犯罪として刑事責任に問われます。
■犯罪をする目的で自分の意志で催眠術にかけてもらった場合
「原因において自由な行為」と呼ばれる刑法理論により、催眠術で心神喪失状態にあっても、刑事責任に問われます。
これは、簡単にいうと犯罪行為の原因となった催眠術に自分の自由意思でかかっている以上、責任能力は否定されないという考え方です。
催眠術にかかった自分を犯罪の道具として利用するのと似ているなどと説明されることもあります。
■催眠術にかけてもらったが、犯罪を犯す気はなかった場合
心神喪失の原因となった催眠術の時点で、犯罪の故意がないため、故意犯(殺人、傷害、暴行など故意による犯罪)は成立しないとするのが通説的な考え方です。
もっとも、心神喪失の状態になれば犯罪を行う危険があることを催眠術の時点で予見できた場合には、過失犯(過失致死、過失傷害など)が成立する可能性があります。
■意図せずに催眠術にかかり心神喪失になった場合
このケースでは、自由意思によって心神喪失となったわけではないですから、責任能力は否定され、犯罪は成立しません。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*MM4 / PIXTA(ピクスタ)
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