●行政代執行とは?
行政代執行は、簡単にいうと、「行政から一般人が何かを命じられたのに、そのすべきことをしない場合に、行政が強制的に命令した行為を代わりに行い、それに要した費用をその人から徴収する制度」です。
例えば、ホームレスの方達が公園などの公共の場にテントや囲いをして居住している場所を強制的に撤去するという報道を見聞きされたことがあるかと思います。これが行政代執行です。
この行政代執行は、その名の通り行政代執行法という法律に定められています。同法は、全部で6条からなる比較的短い法律です。
ただし同法第1条には、「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。」と定められている通り、適用の場面は幅広く、要件を満たせば、あらゆる場面でこの行政代執行が適用される可能性があるといえます。
例えば公園、河川、道路といった公共の場所を正当な権利なく占拠している場合に、当該公共の場を管理する法律に基づいて撤去するように命じられても撤去しない場合に、行政代執行が行われる可能性があります。誤解なきよう注意喚起いたしますが、こういった場合に確実に行政代執行が行われるというわけではありません。実際にはもう少し細かい要件が有りますが、ここでは割愛させていただきます。
● 行政代執行の特徴
こういった行政代執行は、行政の判断により実施されることになります。もちろん法律に基づいて行われているはずですが、うがった見方をすれば、「行政のメリットのために行政の判断で強制的な権力が発動される」という側面があります。
一方、民対民の問題の場合、例えば、自分の敷地内に他人が勝手に家を建てたので撤去させたいというケースであれば、通常、裁判所に訴えて判決を獲得し、裁判所の許可を得て強制執行しなければいけません。
また、行政による強制力の行使という意味では、例えば逮捕されるという場合には、警察が独自に判断して逮捕に着手できるわけではなく、裁判所が発布する令状によらなければ行えません。このような、裁判所(司法)による事前チェックが働かないという点は、行政代執行の一つの特徴といえるでしょう。
冒頭の例では報道によると、地下道の占用許可の更新を求める訴訟が係属中のようです。また、除却命令に対して裁判所に執行停止を求めているとのことです。司法がどのように判断するのか、注目していきたいと思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)
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