最近、海外の航空会社が、イラストレーターの書いたキャラクターを勝手に使用してキャンペーンを行っていたことがネット上で話題になっていました。
イラストレーターは会社に対して削除依頼を出しましたが、会社は「使用した絵に描かれているのは作者の絵からインスパイアを得た別のキャラクターなので削除依頼には応じません」旨の返事をしたようです。
現在この発言は削除され、謝罪もしたようですが、このように、作者の許可を得ないで類似したキャラクター(イラスト)を使うことは著作権侵害に当たらないか、また、インスパイアならば使用することができるのか等について解説したいと思います。
●イラストの無断使用はもちろん著作権侵害
イラスト及びイラストに描かれたキャラクターは、作者の思想や感情を創作的に表現したもので美術の範囲に属するものなので、著作権法で保護される著作物に当たります。
そのため、作者(著作権者)の許可を得ないでイラスト及びイラストに描かれたキャラクターを勝手に使用することは、私的使用などの一定の例外を除き、著作権侵害(複製権や翻案権の侵害)になります。
そして、著作権を侵害された著作権者は、侵害した者に対して差止請求や損害賠償請求などの民事上の請求ができます。
また、著作権侵害には刑事罰が定められており、個人の場合は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または両方の併科、法人の場合は3億円以下の罰金に問われる可能性があります。
●今回のケースではどうなる?
キャラクターの著作権侵害の有無は、作者の考えたキャラクターの表現上の創作性が認められる部分について模倣されたかどうかが問題になります。
今回のキャラクターは一人暮らしの寂しいOLを描いたものであり、際立った特徴がなくありふれた表現といえなくもないので、表現上の創作性が認められないと考える余地はあります。
しかし、会社がキャンペーンに用いたイラストは構図その他から見て作者のイラストに依拠していることは明らかですので、会社が作者のイラストを無断使用したことは著作権侵害に当たるでしょう。
まとめると、キャラクター(OLちゃんという具体的な絵)の著作権侵害が認められるかは微妙なラインにあるといえますが、イラスト全体で見れば問題なく著作権侵害に当たるといえるということです。
●インスパイアならOK?
作者の絵からインスパイアを得て別のキャラクターを創作した場合、著作権侵害に当たらないこともありえます。
他人の創作したキャラクターの著作権を侵害しているか否かは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を直接感得できるか否かによって決まります。
どういうことかというと、類似性があってもアイデアが共通するにすぎない場合や、キャラクターの表現がありふれていて創作性が認められない部分が類似しているにすぎない場合には著作権侵害には当たらないということです。
つまり、インスパイアだからOKというわけではなく、他人の創作物の本質的な部分と類似しているかどうかが著作権侵害の有無を決めるわけです。
もっとも、他人のイラストを無断使用することは基本的に著作権侵害になりますので、許可なくイラストを使用したりネット上にアップしたりすることはしないようにしましょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
*画像:Twitter @InsideScootJP のスクリーンショットを当サイトで加工したもの