「毎日誰かに監視されている」、「メールやLINEが毎日何通も届く……。」、「自宅に誹謗中傷が書かれた紙が頻繁に届く。」
こういったストーカー被害の認知件数は、警察の発表によると平成25年にはついに2万件を超えました。
ストーカー被害から発展した殺人事件も、古くは桶川のストーカー殺人事件、最近ではいわゆる「リベンジポルノ」という言葉を有名にした三鷹での事件が起きており、単なるストーカーと軽視することは出来ません。
しかし、警察にストーカー被害にあっていることを漠然と相談しても、警察があなたの思うように動いてくれないということは決して珍しいことではありません。
先に挙げた桶川のストーカー殺人事件では、警察の捜査怠慢、告訴状の改ざんという衝撃的な後日談が話題にもなりました。
「警察に相談しに行ったがなかなか思うように動いてくれない。」これは、ストーカー被害に限ったことではありません。
僕も、『振り込め詐欺の被害にあったお婆さんが警察に相談に行ったけど、警察官から「相手があなたを騙すつもりだったという証拠でもあるんですか?」と言われた』という信じがたい話を聞いたことが有ります。
ストーカー被害にあった時も、警察を動かすためにはある程度コツが必要だと思います。
●警察の気持ちを考えてみる
あえて警察の立場から考えてあげると、(1)警察も忙しいので被害があると言われたからといって逐一動いていられないのが現状、(2)動いたとしても、万が一犯罪性が無かったら相手方に責任を追及される、(3)動いた結果犯人を逮捕等したとしても、捜査の途中で示談をされて被害届を取り下げられたら動き損だ、こういったことを警察は懸念しているのではないかと思います。
その是非はともかく、警察の肩を持つわけではありませんが、動かないのには警察なりの理由があるのでしょう。ですので、警察を動かすためにはそういった理由を一つずつ排除してあげればいいわけです。
●その1:証拠を集めて提示する
ストーカーの被害にあった場合、まずすべきことはとにかく証拠を集めることです。メールなどが残っているのであれば必ず保存しましょう。それとは別に、万が一携帯が壊れた場合に備えて証拠写真等で保存しておくとよりGOODです。その際には、日付が残る形で保存しておくと良いでしょう。
●その2:状況を常に記録する
警察にストーカー被害の経緯を一から話すとなると、かなり長くなることが有ります。
聞く側の理解を深めるためにも、犯人との出会いから時系列順に書き出してまとめておくと説明がしやすくなります。人間の記憶は思いのほかいい加減なものです。
時間が経てば肝心なことを忘れてしますこともありますので、何かあれば常にメモをするということも必要だと思います。手帳などにその都度メモしたものでも、証拠になり得ますので決して無駄にはなりません。
●その3:告訴を行う
単なる被害相談だけではなく、告訴を行うことも有効です。
本気で事件にしようと考えるのであれば、告訴の際に、証拠資料として被害者自身が作成した文書に「捜査の過程で示談したり告訴を取り下げたりはしません。とにかく厳しく処罰して欲しい。」などと一筆入れておくと良いと思います。もちろん、その約束はしっかり守っていただく必要があります。
●その4:弁護士に相談する
最後に控えめに書きますが、弁護士と一緒に警察に行くというのも有効だと思います。
何より警察に被害者の本気度が分かってもらえます。もちろん、弁護士は専門家ですので、犯人のどういった行為が何という犯罪に該当するか、どういった証拠が有効かなど、的確なアドバイスがもらえるはずです。
「結局弁護士か!」というツッコミが聞こえてきそうですが、上記1~3を実践していただくだけでも、単に手ぶらで被害相談に行くよりは警察もより適切に対応してくれるはずです。被害を未然に防ぐためにも、是非実践してみてください。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)