某アイドルグループのメンバーのTwitterが乗っ取られ、“枕営業”を思わせるツイートや、メンバーを中傷するツイートをしていたことが話題になっています。
「芸能はじめてから何人とエッチしたんだよって」「メンバーみんな頭使えないし、こんなとこいるの無理だよ。」などとツイートし、波紋を広げていましたが、すぐにアカウントは非公開となり、最終的には停止されました。
その後、所属事務所からは乗っ取られたこととアカウントが削除されたことがアナウンスされていますが、今回、乗っ取りを行った側にはどのような問題があるのでしょうか。
■乗っ取りは不正アクセス
ツイートをするためにはログインをする必要があります。ログインをするためにはこのアイドルが使っていたメールアドレスとパスワードなどの情報を入力する必要があります。
本人か許可された者以外の第三者が、これらの情報を無断で使用してログインをすれば、それだけで「不正アクセス行為」になります。
今回のケースも乗っ取られたということなので、不正アクセスをしたということになります。不正アクセス行為をすると、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています。
ちなみに、その後に“枕営業”を思わせるツイートをしたことは、これ自体は不正アクセス行為に当たりません。不正アクセス行為の“後”にされたものだからです。
■“枕営業”ツイートの問題は
“枕営業”ツイートは不正アクセス行為にはならないと説明しましたが、別途、名誉毀損などの問題があります。
“枕営業”をしていた、もしくはさせられていたということは、アイドルにとって大きなイメージダウンです。
また、そもそも“枕営業”のようなことは公序良俗に反するものとなる可能性が高いです(公序良俗とは、「公の秩序、善良の風俗」のことで、簡単にいえば、社会一般に道徳観念のことです)。
したがって、“枕営業”をしていたということは、名誉毀損になります。
また、メンバーを中傷していたという点についても、メンバーを中傷する人物であると認識されるようになる点を捉え、名誉毀損になると見ることが可能です。
■犯人を捕まえることはできるのか
では、乗っ取り犯を捕まえることはできるのでしょうか。
乗っ取り犯を捕まえるためには、Twitter社からアクセス履歴を開示してもらい、さらにそこから分かる情報を元に乗っ取り犯が使ったプロバイダから契約者情報を得ることが、最低限必要です。
まず、Twitterにログインをした際の記録を確認し、普段のアクセスとは異なるIPアドレスがないかなど不審なアクセス記録がないかを確認することが必要です。
■警察によるTwitterの捜査はハードルが高い
ところで、Twitterなどが乗っ取られたということで私にもしばしばいろいろな方から相談があります。
今回のケースでは名誉毀損になり得るツイートがあるので弁護士でも犯人を特定ができる可能性があるのですが(むしろ弁護士の方が早いと思います)、そのようなものがない乗っ取りというのもしばしばあります。その場合、問題とできることが不正アクセス行為だけになりますが、その捜査は警察しかできません。
警察にとっては諸事情によりTwitterの捜査のハードルは高いのすが、ぜひがんばっていただきたいところです。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)