誰でも簡単に手に入り、空を自由に飛ばすことのできるドローンが何かとお騒がせをしています。
ここ数年で急激に値下がりし、数千円で手に入るものも発売され、個人でも空を飛ばしたり、空撮したりするなどをして楽しむ人が増えてきています。
その反面、ドローンが落下した、発見されたなどの報道が 多くなっており、航空法やプライバシー・セキュリティーなどの面から問題視する声も増えてきています。
今回はドローンを使用する上で、違法となるケースと発生しうる賠償責任について紹介したいと思います。
■直接の規制は未整備
話題のドローンについて、現状は法整備が追い付いていない段階であり、現在、国会で直接の法規制が議論されている段階です。
報道によると、現在検討されている法規制の概要は、主に以下の2つです。
・国会、首相官邸、最高裁、皇居、外国大使館周辺など国の重要施設の上空の無断飛行禁止(罰金・1年以下の懲役刑あり)
・航続距離5キロメートル以上の高性能ドローンの操縦に無線従事者の国家資格取得を義務付ける
ドローン購入時の登録制や高性能ドローンの操縦に無線免許の取得が必要となる他、飛行禁止区域が罰則付きで設定される予定です。
今後制定される直接の規制以外に、現行法の枠内でも、ドローンの事故について、操縦者に責任が発生する可能性があります。
■無断撮影の違法性
ドローンの用途は様々ですが、現時点では空撮の利用目的が多いようです。
公園やビルなどの公共の場では、基本的には撮影は自由なので、問題はありませんが、空撮であっても、個人所有の敷地、自宅を無断撮影する行為は、撮影方法、時間帯、写真の鮮明さ次第では、プライバシー侵害として不法行為責任を追及されるおそれがあります。
グーグルのストリートビューでも同じ問題がありましたが、空撮により敷地の構造までわかってしまえば、犯罪にも利用される可能性があり、プライバシー侵害の程度はより高いといえます。
■落下事故による賠償問題も出てくる
すでに落下事故も相当数発生しているようですが、被害が生じた場合は、当然、賠償責任が発生します。
たかがドローンの墜落と思うかもしれませんが、自転車や自動車事故と同じで、人が多いところで落下して人に後遺症を負わせれば、数千万円の賠償額が課せられる可能性があります。
墜落による直撃の場合だけではなく、ビルに激突して看板などが落下し、通行人をケガさせるケースも考えられます。
いずれも、交通事故と同じように、多額の慰謝料や逸失利益の賠償責任を負うことになります。
さらに、都心部の街中上空を飛行させていた場合は、たとえドローンの故障が原因であっても、通行人が多い地域を飛行させていたことをもって過失と認定され、刑法上の過失致傷罪が成立する可能性もあります。
人が多い地域上空での墜落事故の場合、「ドローンが故障した」という操縦者の言い分は、認められない可能性が高いです。
■ドローンで商品を運ぶ場合
アメリカなどでは、ドローンを使ってビザや本などを宅配している業者もあるようです。
商品を配送中、ドローンが墜落して商品が破損した場合、ドローン利用者は、ドローン販売者に責任を問えるでしょうか。これについては、ドローンの販売者が、絶対に墜落しないことを保証でもしない限り、責任を問うことは難しいでしょう。
業者の商品配送用として販売されたドローンでも同じですので、高価品を運ぶことには問題がありそうです。
■リスク回避の手段
ドローンを飛ばすことに伴う被害防止には、現時点では被害が出やすい地域の上空では飛行させないことが重要です。
すでに、損保会社から、ドローンの墜落事故を対象とする保険商品も開発されているようですので、頻繁に操縦する方は、検討してもよいでしょう。
今後、ドローン利用者の増加とともに法規制も整備されると予想されますが、現行法の枠内でも交通事故等と同じような高額の賠償責任が発生するケースもありうることに注意して下さい。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)