週刊誌の「スクープ写真」が盗撮なのに罪に問われない理由

写真週刊誌などでは、芸能人カップルの様子などのスクープ写真が目玉にされることがよくあります。

異性と手をつなぐ、マンションに入っていく、未成年の喫煙写真などなど……年中なにかしらのスクープ写真が週刊誌やワイドショーを賑わせています。

このようなスクープ写真は、当然ながら被写体の承諾を得ていません。このような無断撮影は「盗撮」ということで何かしらの法に触れるということはないのでしょうか?

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■ダメな「盗撮」をするとどうなる?

盗撮というといかにも犯罪の匂いがしますが、「盗撮罪」というような犯罪があるわけではありません。

もちろん、態様によって犯罪になる場合があり、各都道府県の迷惑防止条例違反に当たる場合と軽犯罪法の「のぞき見罪」になる場合が考えられます。

迷惑防止条例は都道府県毎に内容が若干異なりますが、公共の場所や乗物にいる人の下着や身体を撮影することが禁止されているほか、通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる公衆の場所(たとえば、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用できる更衣室など)での撮影を禁止しているところもあります。

迷惑防止条例違反の場合は、都道府県毎に異なりますが、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっていたり、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金などとされることが多いようです。

のぞき見罪の場合は、「人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」をのぞき見ることが禁止されています。これは、30日未満の拘留(刑事施設への拘置すること)または1万円未満の科料とされます。

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■スクープ写真が「盗撮」で即座にアウトにならない理由

さて、こうしてみると、スクープ写真はダメな「盗撮」に当たるのでしょうか。

スクープ写真もいろいろありますが、写真の多くは、手を繋いで帰宅した写真とか、公道上でキスをしている写真など、公道で撮影がされているので、下着などを撮影しているものでない限り、なかなか違法とは言えないと思われます。

ただし、撮影された方からすれば気分のいいものではないことは想像に難くありません。

 

■プライバシー権侵害や肖像権侵害の問題は残る

たとえ芸能人だとしても、プライバシーは当然認められるべきです。そのため、公道といえども勝手に撮影された場合は、プライバシー侵害や肖像権侵害があるとして、損害賠償を求めたり、場合によっては雑誌の発行の差止めを請求することもできます。

ただ、これが当然認められるというわけではなく、そもそもプライバシー権侵害や肖像権侵害があるかどうかという点が、かなり争われることになります。

芸能人の方から「これは何とかできないですか」とお話しをいただくこともありますが、「裁判をする必要がありなかなか長丁場になりますよ」という説明をすると、とりあえず静観するという選択をする方も多いように感じます。

芸能人は、人気商売。下がった評判を、いち早く元に戻すために、あまりことを荒立たせることなく、騒ぎが収まるのを根気強く待つのが得策と判断するのでしょう。


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*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

*画像:ぱくたそ

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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