AV女優でネットで「生放送」をすることで知られている女性が、ゲームに関するブログを運営している男性に「ドッキリ」をしかけたということが話題になっています。
要約すると、交際するという趣旨のことを伝えて交際するふりをし、自宅に招き、その様子を男性に黙って動画配信し、ベッドに入ってから「生放送している。ドッキリです。」と伝えたということのようです。
ネット上では「ハニートラップを仕掛けた」とされていますが、ハニートラップは、一般的には「色仕掛け」による情報収集活動を指すようです。
今回のケースでは情報収集活動がされているわけではなく、いわば色仕掛けを利用したドッキリといえますが、このようなことは法的に問題ないのでしょうか。
■ドッキリ自体は違法ではない
ドッキリをされたブログ主は、恋心を利用されたわけですので精神的ショックは大きいのではないかと思われます。
しかし、ドッキリを仕掛けること自体は、基本的にはなにかの法律に反するとまでは、一般的には言えません。
違法になるといえるためには、たとえば刑法に抵触するような行為が必要になるわけですが、恋心を利用するということ自体は何かしらの刑法に抵触することはないためです。
■ドッキリを放送することは問題になる可能性がある
ドッキリの目的というのは当然「その状況を見て楽しむ」という点にあると思われますが、ドッキリ自体が違法でないとしても、それを放送することも当然に問題ないということにはなりません。
放送される側(ドッキリを仕掛けられた側)は、どのような行動を取っていたのかということを、通常他人には知られたくないはずです。
特に、恋愛感情に基づいての行動は、ときに不合理な行動だったり他人から見れば面白い行動になることもあります(だからこそ見て楽しみたいということなのでしょうけど)。
そのため、どのような行動をとっているのかということは、プライバシーとして保護されるべき事柄といえます。したがって、これを放送してしまうと、原則としてプライバシー侵害の問題を生じることになります。
実際にドッキリはテレビ等で行われることは少なからずあるようですが、それで問題になっていないのは、ドッキリを仕掛けられた側が事後的に問題にしていないからに過ぎません。
■プライバシー侵害だと何ができるのか
プライバシー侵害があるということだと、損害賠償や配信を差し止める(削除)請求などをすることができることになります。
この件を真似て安易なドッキリを仕掛けると、法的責任を負いかねないので、ドッキリを仕掛けるのであれば、相手を見てから決めるべきでしょう。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)