違法な動画を単に閲覧しただけの人に限っては、逮捕されることはまず考えられません。
●閲覧しているだけでは逮捕されることがない理由
例えば、この公然わいせつ罪の幇助犯に該当するためには、少なくとも、正犯(性行為を撮影して配信していた男)の犯罪行為を容易にしていたといえなくてはいけません。
理屈っぽいことをいえば、「正犯はたくさんの閲覧者がいてくれたからこそ頑張って違法な配信を行った」その意味で「正犯の背中を押した」といえなくはないとは思いますが、その程度のことで警察が違法動画の閲覧者を洗い出して逮捕に動くとは到底考えられません。
もちろん、違法な動画であると分かって見ることは褒められたことではないとは思います。しかし、逮捕までされる行為ではないというのが僕の考えです。
●閲覧だけじゃなく録画をしたら「著作権法違反」になる
では、その他の理由で閲覧者が逮捕される可能性はどうでしょうか。
その場合に考えなくてはいけないのが、著作権法違反についてです。
著作権法では、有償著作物(CDやDVD等、販売されている作品をイメージしてください)を録画・録音した人は、その使用目的が仮に販売などの目的ではない私的使用の場合でも、違法であると規定されています。
その場合、違反した人には、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金、又は懲役と罰金を同時に受けるという罰則が規定されています。
そうすると、FC2において配信されている有償著作物の動画を録画した人は、この罪に該当します。
もっとも、この罪は親告罪といって、権利を侵害されている人などからの告訴(警察等に対して罪を申告し、処罰を求めること)が無い場合には刑事裁判にかけられないことになっております。
●閲覧しているだけでは「著作権法違反」にならない可能性が高い
では、「FC2の閲覧者はこの罪で逮捕されることになるでしょうか?」といわれると、やはり逮捕される可能性はほとんどないといえます。
その理由は、違法な動画を単に閲覧するだけでは、「録画」したことにはならないからです。この点は、文化庁のホームページでも明記されていますので、気になる方はご覧ください(記事下部にURLを記載しています)。
また、FC2に動画を閲覧する際に、データをダウンロードしながら再生するようなシステムになっている場合、「録画」といえるので危ないのではないかとお考えの方もおられるかもしれません。
しかし、この点について著作権法は、「情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録すること」に関しては著作権侵害にあたらないというスタンスを取っていますので、処罰の対象にはなりません。
●やはり逮捕される心配はほとんどない
以上の通り、違法な動画をただ閲覧するだけなら逮捕される心配はおよそありません。
ただ、法律を離れて考えれば、閲覧する人がいるからこそ、違法な動画配信を行う人が現れるという関係は確かにあると思います。違法な行為を助長しかねないので、違法な動画を見るのは慎むべきだと僕は思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)
*http://www.bunka.go.jp/chosakuken/download_qa/pdf/dl_qa_ver2.pdf
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