Gmailを使っていることがエントリーシートに書かれていて、それを見た面接官が「Gmailを使うなんて普通あり得ないよ。もう良いから帰って下さい。」と言い、学生が面接もされずに帰ったという話がネットで話題になっています。
ネット上では、「それは差別ではないか」というものや、「断る口実に過ぎなかったのではないか」とかいろいろ言われています。それでは、憲法に則して考えた時、今回の言動は差別になるか否かを考えてみます。
有名な話ですが、憲法によって「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定されています。
仮に企業が女性であることを理由に面接も実施せず門前払いをしたとすれば、差別であることは明白です。憲法が性別による差別を禁じているからです。黒人であることを理由にしたとすれば、人種による差別となります。
しかし、銀行などの固いイメージがある企業の面接にTシャツジーパンを着た学生が来たときに、門前払いをしたとしても、差別ではないです。その理由はなんでしょうか。
●差別になる理由、ならない理由
この差は、個人が努力して克服できる事象で選別しても差別にならない、などと説明されています。
背広を着てネクタイを締めて面接に臨むことは誰でも出来ます。それをしなかったことを理由に選別しても差別にならないということです。しかし、女性がいくら努力しても男性になることは不可能です(性同一性障害に基づく性転換などの事例はのぞきます)。
黒人がいくら努力しても白人や黄色人種にはなれません。従って、性別や人種による差別は禁止されます。
●メールアドレスで選別は差別なのか
Gmailなどのフリーメールを使わずに、有料のメールサービスや学校で発行したメールアドレスなどを使うことは誰でも出来ます。従って、Gmailを使っていることを理由にした選別は合理的な理由が無くても差別とはなりません。
フリーメールによってはセキュリティに対して問題視されているサービスもあると言われ、企業によっては使用禁止にしているところもありますが、就職もしていない学生がそれを使ってはいけないというような常識はまだ確立されていないと思います。
ですので、仮に、企業が就職活動中からも企業との連絡はフリーメールを使ってはいけないと判断するなら、それを事前に告知すべきです。そのような告知もなく、面接段階で突然フリーメールを理由に門前払いをすることは不当としか言えません。
当不当の問題ですから、法律問題にはなりませんが、フリーメールを理由に門前払いするような非常識な対応をする企業だとネットで話題になれば、企業の利益を損なうことになると思います。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
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