新入社員のみなさん、就職おめでとうございます。社会人になって少し時間が経ちましたが、まだ、色々と右往左往、四苦八苦されている方も多いと思います。
「一番下っ端」という新入社員の皆さんの中には、「下っ端は、誰よりも早く来てデスクの掃除をするのが当たり前」、「お茶やコーヒーの準備をしておけ」などと朝早くからの小間使いを強いられている人もいるのではないでしょうか。
今回は、その「新入社員は一番先に出社しろ」の問題点について考えていきたいと思います。
●早朝出勤も時間外労働になることがある
「時間外労働」というと、就業時間後に夜遅くまで残ってやる「残業」のみが対象になるというイメージがありますが、そうではありません。
労働事件に該当するかどうかは、「使用者の指揮命令下にあるかどうか」で判断されます。
ですから、始業時間前に出勤して業務を行っていることが「使用者の指揮命令下」でのことと判断されれば、残業と同様に時間外労働として、時間外手当の支給対象となる可能性があります。
なので、前日の就業時間間際に翌日締め切りの仕事を上司から命じられて翌朝早朝出勤するケースや、他の社員の出勤前に新人が当番制で事務所内の清掃をしておくよう上司から命じられるケースなどは、時間外手当の支給対象となります。
●早朝出勤の無理強いは、「パワハラ」になる可能性も
例えば、業務上の必要もないのに「新人は誰よりも早く職場に来るのが当たり前。来ないやつは、クビだ」などと言って、意味のない早朝出勤をさせるケース、早朝出勤を一度怠ったがために、「お前は無能だ。早起きもできないのか」などと暴言を吐いたり、名前を社内に張り出したりするケース、社内で仲間はずれにするようなケースは、全て「パワハラ」に該当する可能性があります。
このようなケースでは、パワハラをされた側がした側に対して、損害賠償を請求することができます。
精神的な苦痛に対する慰謝料、嫌がらせを受けたことが原因で精神疾患になり治療を受けた場合にはその治療費などを損害として請求することができます。
●パワハラをする企業はまだまだある
先にあげたようなケースがあるなんて信じられないという方も少なくないかもしれません。
しかし、ワンマン経営者が幅を利かせているような企業や、旧態依然とした会社では、案外、このような「新人は先輩の言うことを何でも聞いて当たり前」という風潮が今でもあるようです。
雇う側も雇われる側も、雇用のルールを正しく理解して、トラブルが少ない働きやすい職場づくりをしていただければと思います。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)