先日、ツイッター上に、「電車内に安倍首相を批判する広告が貼られている」という声が多くアップされていたようです。
それらの写真を見ると、すでに貼られている広告の上に重ねるように安倍首相の顔写真と、批判的なコメントが書き込まれているというものです。
具体的には「頭が幼稚なこども総理」「戦争が起きる国へ自民党」「選ばれた政権の私が最高責任者」などのコメントが掲載されています。
このように電車内に勝手に広告を貼付ける行為や、批判的なコメントを大衆に向けて発信する行為などに違法性はないのでしょうか?
●破壊はしていなくても「器物破損罪」になる
電車の公告の上に自分の主張を書いた紙を貼る行為は、器物損壊罪となり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
電車内にある公告は、電車を運営する会社の所有物です。その所有物の上にさらに自分の主張を書いたビラを貼ることは、器物損壊罪と判断されます。公告自体を物理的に破壊してはいませんが、公告の効用(広告の内容を乗客に告知すること)を害しているからです。
●政権批判に問題はある?
ところで、政権を批判することは表現の自由の一種です。
そして、政権批判の自由は表現の自由の中でも最大限に保護されます。それを理由に、器物損壊罪による処罰を免れるのではないか、とも考えられます。中には表現の自由を最大限に保証するために公共交通機関はある程度の財産権(所有権)の侵害を甘受すべきではないか、という意見もあります。
●昔はあちらこちらに貼られていたが…
学生運動が全盛のころ、大学の壁に主張を書いたり壁新聞を貼ったりすることがありました。
あるいは、JRの前身の国鉄時代のストでは、駅にスローガンを貼ったり、電車の外にスローガンを貼ったりしました。大学や国鉄当局は、学生や国鉄職員の表現の自由のために、財産権の侵害を甘受すべきだという意見がありました。
しかし、今は、ネットの時代です。ネットで自分の意見を広く知らしめることが出来ます。他人の財産権を侵害しなくても表現行為は出来ます。今の時代に、上記の意見は通用しないと思います。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
*画像はツイッターの当該ツイートに当サイトでモザイクをかけたもの