「指定席が空いてるならタダで座らせて欲しい」ネットで波紋・・・こんな要望アリなの?

新幹線などの特急電車に乗るとき、自由席でも座れるだろうと思って自由席のチケットを買って車両に乗ってはみたものの、自由席は満席で、一方指定席には空席があったということはよくある話だと思います。

こんな時、「指定席がガラガラだから座らせて欲しい」と、混雑する自由席の客が乗務員にお願いをするということがあるようです。

もちろん座席指定券を持っていない人に対してこのような要望を許可してくれるわけがないのですが、「ガラガラなんだから座ったって良いじゃん」という風に考える人も少なからずいるようです。最近もネット上でこの話題が議論を巻き起こしていました。

では、そのような場面に遭遇したとき、自由席特急券しか持っていないのに指定席に座ることは、法律上、何らかの問題があるのでしょうか。

電車まち

 ■民事上の責任について

指定席特急券と自由席特急券の取扱いについては、鉄道各社が各々のルールを定めています。JRでは、そのルールに該当するのが旅客営業規則です。

鉄道各社のルールでは、指定席に座るときには指定席特急券を購入しなければならないと定めていますから、指定席に自由席特急券しか持たない人が座ることは、鉄道会社との間のルール違反、つまり乗車にあたっての契約違反として、民事上の責任を問われる可能性があります。

■刑事上の責任について

では、自由席特急券しか持っていないのに、指定席に座った場合に、刑事上の責任を問われることはあるのでしょうか。

まず、窃盗罪についてはどうでしょうか。窃盗罪とは、ご存知の通り、「モノを盗む」という行為が一般的です。刑法上、窃盗罪の客体となるのは有体物とされています。しかし、ここで問題となっているのは、「指定席に座ること」という利益であるため、有体物とはいえません。

さらに、日本の刑法ではこのような利益窃盗(きちんとお金を支払わずに、有償のサービス等を享受すること等)は不可罰となっています。したがって、本件では窃盗罪は成立しないことになります。

一方で、詐欺罪については、有体物ではない利益も客体となるとされています。詐欺罪の成立には、「騙す行為」が必要となります。本件の場合、「自由席に乗るつもりで自由席特急券を買ったものの、電車に乗ってみたら自由席が満席だったため指定席に座った」ケースがほとんどであると考えられるため、乗車する人の「騙す行為」を観念することができず、詐欺罪も成立しないこととなります。

■鉄道営業法違反となる可能性はある

鉄道営業法29条は、有効な乗車券を持たずに乗車すること、乗車券の表示よりも優等の車両に乗車することを禁じています。これに違反した場合、2万円以下の罰金を課されることもあります。この法律は、明治33年に施行された法律であり、現代において明確な解釈が存在するわけではありませんが、今回のようなケースがこの条文に該当し、刑事上の責任を追及される可能性は否定できないと考えます。

以上に述べた法律上の問題だけではなく、自由席特急券しか持っていないのに、空いている指定席に無断で座ると、その席の指定席特急券をきちんと購入している別の乗客とトラブルになることも考えられます。

自由席が満席となっていた場合でも、車内で車掌さんにお願いすれば、自由席と指定席の料金の差額を支払って、指定席特急券に変更してもらうことは可能ですから、きちんとルールとマナーを守って乗車するようにしましょう……というのは言うまでもないですね。

 

*著者:弁護士 鈴木翔太(弁護士法人 鈴木総合法律事務所)

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鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

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