「産経ニュース」が個人ブログから文章を盗用? 問われる3つの法的問題とは

産経新聞が「産経ニュース」に掲載していた記事について、「個人のブログから盗用したのではないか」と外部から指摘され、サイトから削除するということがありました。

問題の記事は、イタリア人スケート選手について報道している、イタリアのニュースサイトの記事を引用・翻訳していたものです。これらの記事の日本語表現が、この報道を翻訳して掲載していた個人ブログのものと酷似していたことから、発覚したようです。

もし産経ニュースに掲載された文章が、個人ブログからの盗用だったとした場合、どのような法的問題があるのでしょうか。検証してみます。

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■事実を報じるだけのものに著作権はないが…

著作権法上、「思想又は感情を創作的に表現したもの」が著作物にあたるとされます。そのため、たとえば「いついつ地震があった」などの単なる事実を報道するだけのものには、著作権は発生しないことになります。

問題の記事はイタリアのスポーツニュースサイトのものであるため、イタリアの法律がどうなっているのかという問題はありますが、日本に置き換えて考えると、少なくともこの記事はそれなりの長さがあるものだったようでもあり、単なる事実報道を超えて内容が検討されていた様子です。

そのため、今回の記事については著作権が発生していたものといえるでしょう。

 

■3つの法的問題がある

実は、産経新聞がしたことには、少なくとも3つの法的問題がありそうです。

1つ目は、イタリアのスポーツニュースサイトの記事を引用していたとのことですが、これが適切ではないということです。

著作権が発生していると勝手に利用することは原則できませんが、適法な引用と言えれば、利用可能です。

しかし、引用の要件として、引用する側が「主」で、引用される側が「従」といえる関係(主従関係)にあることが必要ですが、記事全体を引用するようなものはこれに抵触します。したがって、この点でまず問題があります。

 

■適法な翻訳ではない可能性

2つ目は、翻訳をしているという点です。翻訳をするには著作権者の許諾を得なければ原則としてできませんが、引用の要件を満たしている限りにおいて翻訳することは可能です。

しかし、今回の記事は「引用」として記事にしていたようですが、適法な引用だったのかという点で疑問があります。そうすると、翻訳の記事を掲載している点で、翻訳権を侵害しているおそれがあります。

 

■翻訳したものを盗用しているという問題

3つ目の問題は、個人ブログをやっていた方の翻訳文を勝手に利用しているという点です。

仮に、イタリアのスポーツニュースサイトとの間で、引用(ないし転載)し、かつ翻訳をしてもよいという契約となっていたとして、個人ブログが翻訳していたものを勝手に利用してよいかという問題です。

この個人ブログの方も、ニュースサイトから許諾を得ているわけではないと思われます。そのため、この方も翻訳権を侵害している可能性が高いです(なお、個人的に翻訳する分には問題ないですが、それをネットに公開するのは問題という趣旨です)。

しかし、仮に違法な翻訳であったとしても、その翻訳したものに著作物性があれば、その翻訳を勝手に利用することは、別途著作権侵害の問題を生じます。そのため、勝手に個人ブログの方の翻訳を全体的に利用していた様子なので、主従関係がないという問題があり、また翻訳の引用元を明示していないという問題もあり、2点から不適切といえます。

 

今回の盗用問題については、以上のように最低でも3つの法的問題が絡んできます。本当に盗用したのかは定かではありませんが、軽い気持ちで行うと思わぬ問題となることがあるので、正しい知識を持ち、細心の注意を払うようにしましょう。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

*画像:産経ニュースのトップページのスクリーンショット

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清水 陽平 しみずようへい

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